気づけばすっかり陽気もよくなって、雨さえ上がっていれば花見にでも出かけたい気分が募る。
東京・目黒ではいま、どんな天候だろうとさまざまな花を観られる機会が設けられている。「コミュニケーションギャラリーふげん社」での藤岡亜弥写真展「花のゆくえ」だ。
誰もが撮りたくなる「花」をモチーフに
花は古今東西で愛され続けてきたし、カメラを手にしていたらきっと撮りたくなる対象でもある。
そういう気持ちはプロだって何ら変わらないよう。写真家・藤岡亜弥さんも、かねて花にレンズを向けてきた。
作品づくりのテーマに花や植物を据えたことこそないけれど、折々で印象的な花に出くわせばやはり、思わずシャッターを押してしまうものだという。
藤岡さんは、写真を始めてもう30年ほど。先般思うところあって、過去に撮った写真を見直していると、花の写っているものがかなりの量になると気づいた。ならばそれらの花を摘み並べて、展示を構成してみるのはどうか。そんな発想から今展の構想が浮かんだ。
花はいつでもどこにでも存在している
会場に掲げられたのは、たしかに花の写り込んだ写真ばかり。花弁のアップや、瓶に入れてさりげなく部屋に飾られたもの、見舞いとして病室に持ち込まれた花束。公園や畑、山道で咲き誇る花があるかと思えば、枯れて萎れているものや造花まで。
ひとくちに花といっても、ありようはこれほどまでに多様なのだと思い知らされる。
そしてこの花々の、飾り気のなさと親近感はどうだろう。ああそうだった、花はいつでもどこにでも存在していて、誰の暮らしもよく見れば花に囲まれているはずである。どんなつらい時世や境遇にあるときも、ほんの一瞬でいいから辺りを眺め渡して、そこにある美しい色やかたちを見出す余裕がほしいもの。会場に藤岡さんが咲かせた花々は、そんな気づきをもたらしてくれる。