六月三日、モハメド・アリが亡くなりました。ボクサーとしての功績はもちろん、平和と平等主義、人権思想を貫いた稀有な人物。ボクら団塊の世代にとっては、青春のヒーロー、生き方のチャンピオンでした。
例えば一九六七年、ベトナム戦争への徴兵を拒否したのは有名。非国民と糾弾されチャンピオンの座もライセンスも剥奪されました。でも、アリは決して自らの信念を曲げることはなかったの。彼の「良心的兵役拒否の思想」は、その後反戦ムードが高まる中で理解が広がり、リング復活。そして七四年のキンシャサの奇跡で王座を奪還したのよ。
黒人であることを理由にレストランから入店拒否された時、金メダルを川に捨てたという逸話もある。それほどに差別を許さない、平等主義思想の人であったということよね。だけど、その思想の背景には、イスラムの教えがあることはあまり知られてないのじゃないかしら? 実はアリは二十二歳の時にイスラム教に改宗しているの。
奇しくもアリが亡くなる前日、ボクは代々木上原にあるモスクを訪ねていたんです。イスラムの教えは平和と平等主義。例えばモスクの中では権力者も市民も皆が横一列になってお祈りするのだと聞きました。一国の大統領がすみっこでお祈りするのと同時に、タクシーの運転手が真ん中で堂々とお祈りしてる、という光景も普通なの。アリの根底には、このイスラムの教えがあったのね。
翻って十二日、フロリダ州で痛ましい銃乱射テロが発生。犯人はイスラム国(IS)の思想に共鳴していたそう。でも、ISの思想は本来のイスラム教とは全く相容れないもの。今、世界的にイスラムが誤解されているように感じます。日本に住むイスラム教の子どもたちも日々差別を受けている。天国のアリに怒りの鉄槌を下してほしいわね。