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「なんで。痛い、このっ」介護ストレスで実母に手を上げた私が暴力を止めることができた“決定的な理由”とは

『母さん、ごめん。 50代独身男の介護奮闘記』より #2

2021/05/31
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入居先探しは長期戦を覚悟

 我々兄弟は、Tさんのすすめで、母を預ける先として、特別養護老人ホーム、グループホーム、民間の老人ホームを検討することにした。

 特別養護老人ホームというのは、要介護3以上の認定を受けた老人が入居できる公的な介護施設だ。生活の場としての施設なので、継続的医療行為が必要な場合は対象外となる。広域型と地域密着型とがあり、広域型はどこに住民票があっても入居可能。地域密着型は定員29名以下と小規模で、その地域の老人のみを受け入れる。公的施設だけあって、入居費用が比較的安価だ。施設の建設年次によって、設備の充実度合にかなりの差があり、ひとり一部屋の個室のところもあれば、病院の大部屋のようなところもある。やはり、安さは魅力で希望者が多く、入居まで1年以上自宅待機というケースもあるという。

 それに対してグループホームは、主に社会福祉法人やNPOなどの民間が主体となって運営する、地域密着型の介護施設だ。その地域に住む老人を受け入れ対象としている。規模は10名から20名程度で、少人数で家族的介護を行うことを特徴としている。施設は基本個室。こちらも公的な補助が入っており、入居費用が極端に高いということもない。ただし、こちらも人気は高く、入居前の待機が長くなる傾向がある。

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 民間の老人ホームは言うまでもないだろう。全般に入居費用は高い。上を見れば切りがない世界だ。が、逆に言えば金次第でどんなサービスでも選択することができる。やはり高いということがネックになるのか、入居はさほど難しくはない。ここでも「地獄の沙汰も金次第」なのである。

©iStock.com

 実際問題、民間の老人ホームは、我々兄弟の収入に比して入居費用が高過ぎ、とてもではないが利用はできなさそうだった。となると特別養護老人ホームか、グループホームだが、どちらもそう簡単に入居できそうな雰囲気ではなく、「これは長期戦となる」というのが、2016年の末の段階での見通しであった。

【前編を読む】「死ねばいいのに」が止まらない 失禁の始末、汚れた衣類の洗濯、収入の減少…50代独身男性“介護”のリアル

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