歴史的なスーパーホースになったトウカイテイオー
トウカイテイオーは88年4月20日に北海道新冠町の長浜牧場でうまれた。父は三冠馬シンボリルドルフ。母のトウカイナチュラルは脚に難があってデビューできなかった。馬主は「トウカイ」の冠名で馬を走らせている内村正則(東海パッキング工業株式会社)。当初、内村はオークスに勝ったトウカイローマンにシンボリルドルフを配合するつもりだったが、ローマンが現役を続行することになり、代わりに妹のナチュラルにシンボリルドルフを種付けしたのだ。名馬はよく、ちょっとした偶然から誕生するものだ。
トウカイテイオーは全体に細身で、見栄えのするタイプではなかったが、薄い皮膚につつまれた筋肉は柔らかく、なによりもバネがあった。パドックでは後肢を鳥のように跳ね上げる、「鶏跛(けいは)」と呼ばれる歩き方が特徴的だった。
調教師は松元省一。母のナチュラルが籍をおいた縁で息子を預かることになったのだが、トウカイテイオーがはじめてのGⅠ馬である。騎手は安田隆行(現調教師)になった。それまでGⅠに縁のなかったベテラン騎手は2年前から調教師試験を受けていたのだが、試験に落ちたことで騎手人生で最高の名馬に出会うことになる。
2歳の12月にデビュー戦を勝ったトウカイテイオーは、オグリキャップがラストランを飾った日に京都競馬場で2勝めをあげ、3歳になって2連勝する。父のシンボリルドルフを彷彿させる優等生然としたレースぶりで、クラシックの大本命となった。
三冠初戦、皐月賞は直線で早めに先頭に立ってそのまま押しきった。後方から追い込んだシャコーグレイドが勢いよく迫ってきたが、ゴールでは安田が手綱を抑えるだけの余裕があった。
単勝1・6倍と断然の人気を集めたダービーではさらなる強さを見せた。先行集団を見ながらレースを進め、直線で外をとおってスパートすると、2着のレオダーバン(菊花賞馬)に3馬身差をつけている。シンボリルドルフでさえダービーでは一瞬苦しいかと思わせるシーンがあったが、息子は危なげなく、いとも簡単に二冠を達成してしまう。皐月賞、ダービーを無敗で勝ち抜くのはトキノミノル、コダマ、シンボリルドルフにつづいて4頭め。この時点で歴史的なスーパーホースに並んだ。