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「ゼロ・コロナ」路線の徹底が重要

 過去1年以上の各国の新型コロナ対策から、感染者数を徹底的に抑え込む「ゼロ・コロナ」路線の重要性が明らかになった。すなわち感染者数を完全にゼロにするのは困難でも、徹底的に抑え込むアプローチをとることである。複数の国・地域は、市中感染の排除(elimination)に成功し、社会経済活動を再開させている。

 より緩い水準での市中感染を許容していく「ウィズ・コロナ」路線により、経済活動とのバランスをとるべきとの声もあるが、結局、自粛や緊急事態宣言を繰り返す結果となり、逆に経済活動への影響を拡大させてしまう。筆者は、経済活動を守るためにも「ゼロ・コロナ」路線の徹底が重要と考える。特に変異株が増加しつつある現在の状況ではこの方針が非常に重要である。

写真はイメージ ©️iStock.com

 英国型といわれるN501Y変異株は、重症化率・死亡率が従来型より約40~60%高いというデータが報告されている。このため徹底した「ゼロ・コロナ」路線で臨まないと、感染力の強い変異株が感染者数の急増をもたらす恐れがある。そうなると医療機関が逼迫し、十分な治療体制が確保しきれず、結局、死亡者数も重症者数も増えてしまう。さらに、英国型よりも感染力が強いインド型も世界中で広がっている点にも警戒が必要だ。

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 日本と同様に英国でも昨年の9月以降の後手に回った新型コロナ対応については強く批判されている。しかし、その一方、ジョンソン政権は、2度目のロックダウンを解除した12月初旬に「正常化への道」を公表し、その実践に乗り出した。その内容は、ワクチン接種と検査を2本柱とした戦略である。5月17日からはパブやレストランの屋内営業やコンサートも再開された英国が感染を抑え込んでいるのは、「正常化への道」が功を奏しているからだ。

戦時下”のような状態のロンドン ©️iStock.com

英国の迅速なワクチン接種と国民全員検査

 英国では、これまでのコロナ対策の失敗から、「人の行動制限のみでコロナ対策は難しい」という認識のもと、他国よりも早いタイミングでワクチン開発と迅速な接種の準備に注力してきた。

 具体的には、、オックスフォード大学のパンデミック・チームにMERS(中東呼吸器症候群)ワクチンの技術をコロナに使う準備を昨年1月に開始させ、アストラゼネカ社との共同開発を支援するとともに、昨年5月にはワクチンの早期接種のためのタスクフォースを立ち上げ、ベンチャーキャピタリストのケイト・ビンガム女史をトップに任命した。

 投資家の彼女は、早期接種のためには、ワクチン確保だけでなく、情報システムやロジスティックス、そして、官民連携が極めて重要であることをよく理解し、タスクフォースに医療の専門家だけでなく、データサイエンティストやロジの専門家の参画も求め緻密に準備を進めた。

 さらに、現場での接種プロセスを加速するため、医療施設以外にも、薬局、スポーツセンター、教会、オフィスなどで打てるように規制を解除し、もともと薬剤師がワクチンを打てるうえに、法律を改正して訓練を受ければボランティアでもワクチンを打てるようにした。このスピード感と機動性は、ワクチンの確保とロジに大きな遅れを見せる日本と対照的だ。