「総合診療医」の割合が諸外国に比べ低い日本
さらに、医師の専門性も影響を与えている。日本の病院の医師は臓器別専門医師(呼吸器、循環器等)の割合が多く、臓器を広く診断できる総合診療医の割合が諸外国に比べて低い。コロナのような新規の感染症への対応には、臓器別専門医師よりも総合内科や集中治療等の医師が対応しやすい。医師の構成を中長期的に見直していくことも課題となるのではないか。
つまり、コロナ対応に適した総合内科等の医師が諸外国に比べて貴重な存在になっているだけでなく、数多い病院に広く分散し、各病院ごとに対応に追われている状況となっている。
厚労省の最新の病床使用統計が2月24日というのも驚きだが(つまり、5月20日現在の状況が全くわからない)、その最新の数字を見ても、10人以上の重症患者を受け入れている400床以上の大病院は、たった4病院であり、大学病院や急性期病院はスタッフ不足で受け入れが難しい状況となっている。
逆に、4人以下しか受け入れていない400床以上の大病院が124病院もあり、コロナ対応が多くの病院でバラバラに行われていることが如実に示されている。今や、その状況はさらに悪化しているであろう。
こうした状況では、例えば特定の病院にコロナ対応に適したスタッフを集約してコロナ対応に特化した病院を整備していくなど地域ごとに思い切った医師等のスタッフの再配置や、マクロ的視点から病院等の垣根を越えて「広く、薄い」からの脱却を進めるべきであるのだが、長年固定化してきた日本の病院機能の構造は、こうした医療資源の効率的配置を難しくしている。
つまり、日本は病床数というスペースは必要以上にあるが、それを使いこなすスタッフについて、「広く、薄い」配置による非効率性、専門性の構成の偏り等様々な課題を抱えている。こうした構造的課題はすぐに解決するのは困難であるが、今後も新たな感染症への対応が継続的に必要になることも想定されることを踏まえれば、抜本的な改革を進めることが必要だ。(後編へ続く)