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 こうした取り組みにより、英国は、米国ファイザー社製のワクチンを世界で最初に承認し、米国より早く12月8日から接種を開始した。1月にはアストラゼネカ社製、4月に入りモデルナ社製のワクチン接種も始まっている。4月初めまでに50歳以上は全員1回目の接種を終え、既に成人の70%が1回目を、40%が2回目の接種を終えている。

 現時点で、変異株に対するワクチンの効果が残存するという科学的知見に基づき、何よりも接種を急ぐことが肝心であるという方針のもと、9月までに全ての成人に2回目のワクチン接種を終える予定だ。

 また、ワクチン接種とともに検査・隔離の充実が必須だ。英国政府は昨年9月に「国民全員検査」の方針を打ち出し、無症状感染者対策が鍵であり、検査拡大が社会経済を回すために必要だと強調した。この方針のもと、PCRセンターを増やすとともに、自宅でできる迅速抗原検査を開発した。

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 抗原検査はその精度ではPCRに劣るものの、定期的に頻繁に行うことによってそれを補うことは可能であり、また、周囲に感染を広めるリスクの高い患者を発見するには十分な精度があることが示されている。

PCR検査 ©️iStock.com

日本では検査件数・データ活用とも大きな遅れ

 英国における検査数は順調に増え、現在では1日100万件以上の検査が行われている。さらに、3月8日からはイングランドでは無料で誰でも週に2回の迅速検査ができるようになっている。日本では英国の迅速なワクチン接種について報道されることが多いが、実はこうした検査の拡大についても、変異株の早期発見や感染の再燃、そして、感染リスクの高い集団の洗い出しに大きな効果を上げているとの認識が英国の専門家の間で広く共有されているのである。

 イギリスでは変異株の発見と分析が非常に早く進められている。これは大きく拡大した検査ネットワークから得られるデータを専門機関の間で広く共有し、様々な機関が連携しながら機動的にゲノム分析等を進める連携体制(コンソーシアム)ができているからだ。

 また、感染拡大しつつあるエリアの把握もスピーディーに行われている。検査のネットワークで南アフリカ型やインド型の変異株が東・南ロンドンの貧困地域に広がりつつあることが早い段階で把握され、個別訪問による検査で感染者を洗い出して隔離する取組みが迅速に進められた。また最近では、変異株は子どもにも感染が広がりやすいことを踏まえて、学校での定期的な検査も進められている。

写真はイメージ ©️iStock.com

 これに対して日本では、検査件数が依然として1日15万件程度に留まるほか、検査データは広く共有されていない。特に、国立感染症研究所を中心とするヒエラルキーから脱することができず、オールジャパンの体制による変異株分析やコロナ対策充実のためのデータ活用にも遅れを見せている。