近年、ペットはすっかり「家族の一員」として定着している。しかし、狭いスペースで過密飼育する繁殖業者や、売れ残ったペットを引き取り、そのままする悪質な「引き取り屋」が現れるなど、課題も多い。物言わぬペットの悲惨な事件をなくすために、飼い主は何ができるのか。ペットの販売事情や販売トラブルに詳しい専門家に聞いた。(※本稿にはショッキングな表現、写真が多出します。ご注意下さい)
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コロナ禍でペット市場が活況
コロナ禍で在宅勤務や自粛が増え、ペット市場が活況を呈している。2020年度のペット市場規模は1兆6000億円を上回り、前年度比3.4%増と好調だ。
しかしその一方で、劣悪な環境下での高頻度の繁殖や、過密状態での多頭飼育、餌を与えず不衛生な状況で動物を放置するネグレクトなど、目を覆いたくなるような動物たちの惨状が、たびたびニュースになっている。
「深い愛情を受けて幸せに暮らしているペットもいますが、人間社会の犠牲になって、ひどい扱いを受けている動物はたくさんいます」と、ペットに関する事件や動物虐待事件を多く手がけ、動物の法律に詳しい細川敦史弁護士は話す。
遺伝的な病気は、生後すぐにはわからない
2019年の動物愛護管理法改正によって、原則的に生後56日(8週間)までの犬や猫の販売が禁止された。改正以前は、生後8週未満の犬や猫がペットショップで売られ、人気を集めていた。
「生まれて間もない犬や猫は確かにかわいい。でも、遺伝的な病気は生後数か月以上経ってから、繁殖場由来の感染症は親の移行抗体が切れる2か月目くらいから、それぞれ症状が現れ始めるので注意が必要です」
こう話すのは、長年ペット業界に関わり、ペットショップ勤務やブリーダー経験も長い動物福祉活動家の成田司さんだ。成田さんはペットショップに勤務していた頃から、幼犬や幼猫販売によるトラブルを見てきたという。かわいさに惹かれて生後間もないペットを購入したものの、購入後数か月経ってから先天性の病気が見つかり、揉めるケースも多かったそうだ。