劣悪な環境で繁殖を繰り返した、福井県内の動物販売業者
遺伝子疾患を抱えるペットが容易に市場に出回っている背景には、劣悪な繁殖環境が影響しているケースもあると細川弁護士は指摘する。営利目的という側面だけをみれば、費用を抑えて大量繁殖ができる「子犬工場(パピーミル)」方式は、理に適っているという見方もできる。しかし、あたりまえだがペットの命は「商品」ではない。
細川弁護士が手がけた事件では、福井県内の動物販売業者が400匹近くの犬や猫を狭いスペースで過密飼育し、劣悪な環境で繁殖を繰り返していたケースがあったという。公益社団法人日本動物福祉協会の代理人として、2018年3月に動物愛護法違反(虐待罪)で刑事告発したが不起訴となった。
「この時はテレビ各局も取り上げ、お昼のニュース番組で、狭いブロックで囲まれた『マス』に子犬たちがすし詰め状態で飼育されているセンセーショナルな映像が流れました。『ひどすぎる』とテレビ局にも大きな反響があったようですが、嫌疑不十分で不起訴となりました。市民は『おかしい』と言っているのに、専門家が『(立証は)難しい』という、この状況こそ『おかしい』」と細川弁護士は話す。
2019年の動物愛護管理法改正では、殺傷に関して「2年以下の懲役または200万円以下の罰金」から「5年以下の懲役または500万円以下の罰金」へとより厳罰化された。「虐待・遺棄についても、罰金100万円以下に『1年以下の懲役』が追加されました。販売業者への規制強化や意識改善はもちろんですが、購入する消費者(飼い主)も、ペットの『命』を扱っているということ、買おうとするペットがどういう環境からやってきたのかを、もっとしっかり意識しなければいけないと思います」(細川弁護士)