「飼いたい犬」と「飼える犬」は違う
成長するにつれてぬいぐるみのようなかわいさがなくなってくると、「思っていたのと違う」「想像していたより手間がかかる」など、飼いきれなくなって無責任に手放すトラブルも発生する。
「犬の場合、生後3か月頃までは、その子の性格や精神面を決める社会化期とされています。この時期に親や兄弟から引き離され、犬としての生活を身につけることができないと、ほえたりかみついたりするなどの問題行動を起こしやすくなり、それが飼い主の遺棄につながる場合もあります。『飼いたい(買いたい)犬』と『飼える犬』は違うということを、飼い主はもっと自覚するべきです」(成田さん)
特に、猫に比べて種による特性が顕著に表れる犬は、飼い主側の知識や覚悟がより必要だと成田さんは話す。犬は昔から、狩猟のお供や家畜の番犬、盲導犬や警察犬など、人との関係性によって「役割」を進化させてきた。犬種によって性質が大きく異なるので、それを知らずに「かわいいから欲しい」「流行っているから飼いたい」という気持ち先行で飼い始めると、ペットも人間もお互いにつらい思いをすることになりかねない。
「犬を飼いたいと思った場合、まずは犬とどんな生活をしたいのかを考えた上で、自分の家族構成や家庭環境にあった犬種は何かを勉強するところから始めなくてはいけません。少なくとも、自分が購入したい犬種がどういう性質で、どんな育て方をしなければいけないのかを知っておくのは、飼い主の義務だと思います」(成田さん)
数十万円もする犬や猫がクレジットカードで購入できるようになったここ20~30年は、犬や猫のブランド化が進み、ファッション感覚でペットを迎え入れる人も増えた。たとえば、最近はまちなかでイタリアングレーハウンドをよく見かけるが、これもテレビドラマやCMが影響していると成田さんは見ている。
人気の犬猫はよく売れるので、当然、ペットショップでの取扱い数も多くなる。ペットショップは売れればいいので、「今ならお買い得」「抱っこしてみませんか」など客に声をかけるが、もし家の中で過ごすことが好きな人が、家畜の番犬用として進化し、多くの運動量を必要とするボーダーコリーやコーギーを購入してしまった場合、「思っていたのと違う」「家具や床に傷をつけるのでもういらない」と飼育放棄につながりかねない危険がある。