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「400匹の犬猫を過密飼育して繁殖」「売れ残ったペットの糞尿掃除もせず…」 ‟商品”として酷使されるペットの悲惨な“実態”

2021/05/28

genre : ニュース, 社会

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信頼できる先から迎え入れることが大切

 こうした犬や猫の性格・性質と飼い主とのミスマッチを防ぐためには、信頼できるブリーダーから直接購入するか、ある程度成長して、性格や性質が見極めやすい保護動物の中から、犬や猫を引き取るのがベストだと成田さんは言う。「昔は犬や猫は近所の知り合いからもらってくるケースが圧倒的に多かった。商売として、自分が好きな純血種を自ら輸入・繁殖させ趣味と実益を兼ねた販売をし始めたのが、そもそものペットショップやブリーダーの成り立ちです。当時は純血種の犬猫の流通はごくわずか、贅沢品であったため、今のような過剰在庫や無責任な飼育放棄などの社会問題はありませんでした。現在のような高付加価値化・大量生産・大量販売の仕組みに供するために、どのような現場から生まれた大量の命が店頭に並んでいるのか、そこをまず知った上でペットショップに足を運ぶと、また違った見方ができるようになるはず」(成田さん)

「この犬(や猫)が欲しい」と言った時に、飼い主の家庭環境や飼育状況をつぶさに確認しアドバイスできる店員は信用できると成田さんは言う。「その子、人気なんですよ」「しばらく入荷しないので今すぐ買った方がいい」など、やたらと購入を勧めてくる店は利益優先の可能性が高く、信用性は低いそうだ。

福井県の動物販売業者の繁殖場(日本動物福祉協会提供)

マイクロチップ装着・登録の義務化

 一方で、販売業者への規制は年々厳しくなっている。

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 2019年の法改正によって、ペットショップや犬猫を直接販売するブリーダーなどにはマイクロチップの装着と所有者情報の登録が義務づけられた。マイクロチップは、直径2㎜、長さ12㎜程度の円筒形の電子標識器具で、15桁の個体識別番号が記録されている。これを体内に埋め込むことで、半永久的に読み取りが可能な身元証明になる。

 マイクロチップの装着・登録の義務化は、災害や盗難、事故などで飼い主と離ればなれになってしまった場合でも、データベースに登録されている飼い主情報と照合することで飼い主のもとに戻りやすくすることが狙いだが、同時に、無責任な飼い主の遺棄を防ぐ効果も期待されている。

 また、現段階では、マイクロチップに登録可能な情報は個体識別(飼い主の名前、住所、連絡先)のみだが、いずれここに血統書の遺伝子情報を紐付けることができれば、「どんな親から生まれ、どんな生育環境で育ったかを飼い主が知ることも容易になる」と期待する声もある。

福井県の動物販売業者の繁殖場(日本動物福祉協会提供)

「純粋犬種に発行されている血統書情報もマイクロチップに組み込んでほしい」と話す成田さんは、「個体識別情報に加えて数代前の祖先までさかのぼって記載されている血統書情報が加われば、ある個体に遺伝的疾患があった場合、さかのぼってどの個体が遺伝疾患を発症しやすいかなどを特定することができる。そうなれば、先天性の病気に苦しむ動物を増やさなくてすむ」と希望を抱く。