クリエイターたちが語るリアルな声、そしてプロモーションの視点を交えながら、世界的な音楽ブームへと成長した「K-POP」を体系的にまとめた書籍が、音楽好きの間で話題となっている。
書籍のタイトルは、その名もずばり『K-POPはなぜ世界を熱くするのか』(朝日出版社)だ。ここでは、同書の一部を抜粋し、著者の田中絵里奈氏が考察した“日本と韓国のアイドルグループの振付”に関する決定的な違いを紹介する。(全2回の2回目/前編を読む)
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フックソングとポイントダンスからの進化:振付
K-POPのパフォーマンス、というと、一糸乱れぬ迫力あるフォーメーションダンスと、何度も反復されるキャッチーな振付が思い出されるはずだ。実際この2つはK-POPのダンスを構成する重要な要素であり、そのままK-POPの世界的なイメージを形作ってきたものである。
前者はよく「カルグンム(刃群舞)」と呼ばれ、刃のようにキレの鋭い動きを群れ全体でシンクロさせて踊ることを指す。2011年に、INFINITEが「BTD(Before The Dawn)」という曲で披露した、うつ伏せ状態からサソリのように起き上がる「スコーピオンダンス」は腕の角度まで皆がピッタリと合っていて、それ以降、一体感のある高スキルなダンスに対して「素晴らしいカルグンムだ」などと言って、韓国のメディアでは今でも「カルグンム」は称賛の言葉として多用されている(INFINITEは元祖カルグンムグループとして名を馳せた)。
後者のキャッチーな振付については、2010年から始まった第二次韓流ブームの頃、日本のメディアが少女時代の「GENIE」の振付を「美脚ダンス」、KARAの「ミスター」のそれを「ヒップダンス」とネーミングし、ワイドショーでもしきりに取り上げられていたのを思い出す。世界的に大ブームとなったPSY「江南スタイル」(2012年)の、ステップを踏みながら手綱を引くような「乗馬ダンス」はマドンナもコンサートで披露した。TWICE「TT」(2016年)のサビで繰り返される、泣いた顔文字を表現した「TTダンス」も大流行したが、最近ではNiziU「Make you happy」の「縄跳びダンス」、「Step and a step」の「うさぎダンス」も記憶に新しい。こうしたパッと見ただけで覚えてしまいそうなダンスは「ポイントアンム(ポイントダンス)」と呼ばれる。