1ページ目から読む
3/4ページ目

 男性たちの年齢は55~75歳くらいだろうか。宴を繰り広げるのは午前中から夕方まで。一般的な社会人であれば労働時間である。彼らの属性は無職、日雇い労働者、ホームレス、生活保護受給者、独居老人など。

 生活保護者や独居老人は主に豊島区、板橋区、北区、そして東武東上線や京浜東北線沿いの埼玉県在住で、そこから池袋駅西口に集まってくるようだ。午前中から顔見知りと談笑し、酒盛りしながら盛り上がり、気が向いたらすぐ隣にいる街娼を“買う”こともある。

 一方、女性の年齢は45~65歳くらいか。30代は美香さんだけだろう。年齢が若いことで男性たちに一番人気のようだ。彼女がこのスポットに現れると、男性たちがすぐにわらわらと集まってきて彼女を取り囲む。そして盛り上がる。彼女はアイドル的な存在であり、太っていても、歯がなくても、まわりの評価は高い。彼女にとって居心地がよく、そのため街娼をずっと続けているのだろう。

ADVERTISEMENT

 午前中から酒盛りする人々は、異様な雰囲気を醸しだしている。少なくとも「普通」ではなく、貧困層みたいなイメージはひと目でわかる。そのスポットは繁華街、大通りに面していて、一般通行人もメチャメチャ多い場所である。貧困が可視化されているのだ。美香さんを筆頭に常時数人いる街娼たちは、ただその場にいる仲間うちだけではなく、通行する誰かしらからも声をかけられる。そして、価格交渉してホテルや公衆トイレなどに移動して売春をする。

 街娼から男性に声をかけることはない。買いたい男性が寄ってきて、街娼は価格を伝えて応じるだけだ。営業や営業努力みたいなことは基本的に必要なく、日々、宴をしながら遊び半分やノリでお客をとり、肉体関係を通じて相手からお金を渡されている。そのお金で生きていけるようだった。

 男性たちも街娼も、社会的な常識や世間の目、他人との競争、自分をよく見せたい自意識などから解放されている。池袋駅西口にいる男性や街娼は不幸どころか、とても幸せそうに見えた。

©️iStock.com

新型コロナで売春価格を1万円に値上げ

 筆者はある人物を通じて美香さんを紹介され、彼女は興味がないので事情がよくわからないまま筆者を相手にしている。同行した池袋の街娼スポットでは、乳揉みまくりのパリピ的な宴が続いていた。彼らは楽しそうだったが、社会や社会的な人物は受けつけないという閉鎖性も感じられる。

 美香さんはいま1万円で売春している。新型コロナで池袋の人通りが減り、その影響で売春の売り上げは半減した。新型コロナ前までは売春価格は5000円から受けつけていたが、客が半減したため5000円で売ることはやめたと言う。彼女の客はリピーターなので苦情はほとんどなく、売り上げは微減程度らしい。