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出会いは「売春婦」と「買春客」という関係で…池袋駅西口で体を売る女性(39)が明かす“街娼の恋愛事情”

『新型コロナと貧困女子』より #1

2021/06/03
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 ここで美香さんの外見、風貌を伝えておこう。ものすごく太っている。おそらく体重は120キロを超えているだろう。今日は前面にキャラクターがプリントされたマタニティー用のシャツを着ている。そして、手づくり風の布マスクを顎にかけている。巨乳だ。大きな胸は垂れているのか、お腹のあたりが膨らんでいる。ひと目でブラジャーをしていないことがわかる。そして、歯がない。しゃべりながら見える範囲の歯は、1本もない。歯がなくても滑舌が悪いことはなく、言葉は普通に聞きとることができる。昭和56年生まれ、39歳だという。

 実は美香さんと会うのは2度目で以前にも話したことはあるが、街娼という職業柄なのだろうか、家庭や仕事、雇用など社会全般への興味がいっさいなかった。恋愛だけには若干興味があるようにみえたが、一般社会への興味がないためか“女性の性”を売っているという意識、自分の商品価値を上げるみたいな意識はまったくない。歯がなくても下着をつけていなくても、なにも気にしていない様子だった。

©️iStock.com

39歳の“大型アイドル”

「池袋はすごくいいところ。本当にいい。ヤクザはうるさくないし、仲間はたくさんだし、毎日楽しいし」

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 美香さんは歯がない唇を開けて、今日初めて笑った。すぐに池袋駅西口近くにある街娼スポットに到着する。男性と女性が大勢いる。男性はボロボロの布をまとったホームレス風、発泡酒を片手に大きな声でしゃべる泥酔者、高齢者。多くの生活用品を自転車にくくりつけて移動するホームレスもいた。

 そして、その集団の中に女性もいる。極端に太った体躯の大きな女性、髪の毛を長年洗っていないと思しき老婆、歯がない中年女性など、男性も女性も「一般的」といえるような人はまったく見当たらない。

 美香さんが到着すると、彼女の名前を叫びながらわらわらと複数の男性たちが群がってくる。酔っている男性が多く、なにか宴会のような雰囲気だ。筆者は少し離れた場所から彼らを見ていたが、大声で語りまくり、時に絶叫し、笑顔まみれで楽しそうだ。完全に3密状態であり、新型コロナ感染や不要不急の外出自粛要請みたいなことは、まったく気にしていない様子だ。

 この宴会のような集いは池袋駅西口のとある場所で、晴天時には毎日行われている。筆者が1週間ほど前にここを通ったときには、彼らの横で豊島区役所職員が拡声器でステイホームや不要不急の外出自粛を呼びかけていた。職員は汗まみれになって叫び続けていたが、彼らは誰一人として気に留めていなかった。

 15分くらい経っただろうか。美香さんに群がる高齢男性の一人が笑顔で叫びながら、彼女のノーブラの巨乳を揉みだした。お腹のあたりの巨乳がブラブラと揺れる。流れに任せて別の高齢男性がもう片方を揉みだして、もはやフィーバー状態である。美香さんはこのセクハラ、痴漢行為を気にする様子もなく、何事もなかったかのように笑っている。