昭和34年(1959年)創刊の総合週刊誌「週刊文春」の紹介サイトです。最新号やバックナンバーから、いくつか記事を掲載していきます。各号の目次や定期購読のご案内も掲載しています。

2021/06/10

source : ノンフィクション出版

genre : ビジネス, 読書, 働き方, 企業, 社会

「一反単位の販売」から「切り売り」へ

 越後屋はそれまでの常識だった「一反単位での販売」から、客が必要な分だけ反物を切って販売する「切り売り」を採用します。これは呉服屋業界の慣行を破ったもので、周囲を驚かせました。たとえば子供に呉服を買おうと思っても、これまでは布が余ってしまうから高くつくと親は躊躇するのが一般的でした。そこに「切り売り」が登場し、親が子供に買うニーズを取り込むことに成功したのです。その結果、幼少期から越後屋の顧客になり、のちにその子供が結婚する時にも利用してもらえるようになりました。

©iStock.com

「時間がかかる仕立て」から「即座仕立て」へ

 今までは納期まで時間がかかっていたものを、即座に仕立てて渡す「即座仕立て」も実施。お客さんは再び来店する手間がなくなり好評を得ました。これも慣習を打ち破る、越後屋の「顧客志向」を表すイノベーションです。

【3】「現金安売り掛け値なし」――日本初!1行バカ売れコピー

本邦初の大々的な広告キャンペーン!

 越後屋は、「店頭販売」などの画期的な販売方法を世の中に広めるために、広告に力を注ぎました。結果として越後屋は、日本における広告の先駆けとも言える存在になったのです。特筆すべきは天和3(1683)年、本町から隣の駿河町に引っ越して再オープンする際、日本初と言われる引札(現在のチラシ)を使っての大々的な広告を実施したことでしょう。

 その時のキャッコピーは「現金安売り掛け値なし」です。これは「どんなお客さんにも値札通りの安い値段で提供します」という宣言でした。

世界初⁈広告測定を実施

 この「現金安売り掛け値なし」の引札は、江戸中に5万枚以上も撒かれたと言われています(当時の江戸の人口は約50万人と推定されるので、その広告の規模が想像できるはずです)。それに加えて越後屋は、この広告の効果測定を実施しました。結果、売り上げは3カ月間にわたって60%増を記録しました。このような広告測定は、世界初と言われています。

 その後も越後屋は江戸時代を通して何度か広告測定を行っています。