1ページ目から読む
4/4ページ目

「アイカサ」はなぜ返却率100%なのか?

 日本でも傘のシェアリングは、いろいろな場所で試験的に実施されましたが、その多くが社会貢献的な意味合いが強いものでした。しかも、やはり傘の返却率は悪く、打ち切りになってしまうケースが目立ちます。2016年3月、北海道新幹線開業に合わせて、函館市が傘のシェアリングサービスを実施しましたが、用意した2300本のうち2100本が戻らず、1年間で終了してしまいました。

 そんな中、2021年現在、注目を浴びている傘のシェアリングサービスがあります。2018年、丸川照司が大学を中退して創業したNature Innovation Groupが提供するサービス「アイカサ」です。

©iStock.com

「アイカサ」はLINEのアプリを使用します。傘のロックや管理システムは、中国のシェアリングサービスを参考にして製造を委託。傘のレンタルは1回24時間70円。使い放題プランで月額280円。課金上限を月420円にすることで、ビニール傘を買った方が安いということを避けるようにしました。アイカサの返却率は99%のことです。これはユーザーの決済情報を登録して、借りっぱなしだと追加料金が発生するためだと考えられます。

ADVERTISEMENT

 ビニール傘の市場規模は約400億円。丸川は、「大手が参入するにはニッチな市場だけど、スタートアップが狙う市場としては十分に魅力的だ」と考えました。また「東京都内だけでも年間2000万本ものビニール傘が購入され、その多くが捨てられるか使われずにオフィスや自宅に貯め置かれていることに、大きな無駄を感じました。傘のシェアリングはその無駄をなくす上に、傘を持ち歩かなくていいという人々の生活を便利にするものです。そこに事業性を感じます」と語っています。「アイカサ」は、鉄道会社、コンビニ、自治体などと提携し、かなりの勢いで広がっています。ここに、越後屋のような企業の広告やブランディングに繫がるものや、持つとステータスを感じる要素が入ると、さらに収益性が高まるかもしれません。

400年前なのに最先端! 江戸式マーケ

川上 徹也

文藝春秋

2021年6月10日 発売