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「この真っ白い雪山にチョコレートをかけて食べたら…」

「ブラックモンブラン」を製造する竹下製菓は、今年で創立120年目を迎える。明治時代に菓子会社として創業して以来、当たりくじ付きのアイスやミルクセーキアイス「ミルクック」、しましま模様のチョコバナナアイス「トラキチ君」など、ユニークなネーミング商品を続々と世に送り続けている企業だ。

 

 アイスバーが作られるようになったのは1958年のこと。創業から培ってきたお菓子作りのノウハウをもとに手作りで開発したという。

(写真はイメージ) ©文藝春秋

 その後、三代目社長である竹下小太郎氏が、経済使節団の一員としてヨーロッパのお菓子業界視察の旅に出た際、雪に包まれたモンブランを見て「この真っ白い雪山にチョコレートをかけて食べたらさぞや美味しいだろうなぁ」と思ったことをきっかけに、1969年「ブラックモンブラン」が誕生した。

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店頭で目立ったそのパッケージ

 ユニークな経緯で生まれたこの看板製品は、この半世紀の間に佐賀県を中心に九州のソウルアイスとなった。時代も、その成長を後押ししたと言っても過言ではない。

 誕生した1969年には日本で最初のコンビニエンス・ストアが誕生。1974年5月にはセブン-イレブン1号店(江東区豊洲)が開店し、日本に本格的なコンビニエンス・ストア時代が到来した。アイスクリームを取り扱うお店の数自体が増え、数多くのアイスが店頭を賑わせるようになった。

 こうして全国各地でそれまで以上にアイスクリームが消費者の身近な製品になったわけだが、当時のアイス業界といえば、雪印、明治、森永がアイスストッカー(アイスショーケース)内を占領していた時代。多くの商品は、青色の単色デザインのカップアイスやバータイプのアイスが多く、会社名を目立たせた商品が中心だった。

 

 そんなとき、バニラアイスをチョコやクッキークランチで覆った「ブラックモンブラン」は高級感を漂わせ、さらに会社名よりも商品名を前面に押し出しカラフルなパッケージデザインで店頭に並んだ。当時としては珍しかったこの意匠が他社との差別化を実現し、売り場の中でひときわ存在感を放ち続けたのである。