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堂場 勝手に動く人間のほうが、当たったときは大きな手柄を挙げますからね。ただ外れるときは大外れというケースもあるからなかなか難しい。

服藤 これは持論なんですが、私は自分のチームの中に、きちんと反論できる人を必ず入れたいと思ってやってきました。イエスマンばっかりだったら、必ずその組織は失敗するんです。

堂場 それはあらゆる上司が欲しい人材ですよ。なかなか居ないんですけど。

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服藤 私がかかわっていた平成の初期の捜査一課にはそういう人間がいたんですよ。会議でも管理職に食って掛かるような。彼に対して上司がちょっと注意したところ、「階級で事件の捜査をやるんだったら警視総監を連れてこい。そうすればみんな解決するだろ」と言い放ったんです(笑)。

堂場 いい話ですね(笑)。捜査一課はそうあってほしい。僕は小説では人間のエゴを描きたいなと常々考えてまして。

服藤 エゴですか?

堂場 はい。自分の仕事を全うするために余計なものがあれば排除するし、場合によっては人の邪魔だってする。手柄を立てることって自己満足でしかないけれど、実際のところ他者のために仕事ができる人ってほとんどいないとも思うんですね。だから僕の小説にはエゴ満載の刑事が登場してしまうんです。また、そういう人のほうが求心力があったりしますし。

堂場瞬一さん ©石川啓次/文藝春秋

服藤 エゴにつながるかは分かりませんが、刑事の場合、事件の裏には必ず被害者がいるわけです。結果を出すことは被害者のため、あるいは同じような犯罪を起こす人間を絶つことに繋がります。そこに自己満足や自己実現を感じながら生きている刑事はたくさんいますよ。

公務員人事は書きにくい

堂場 『警視庁科学捜査官』の後半は、服藤さんがよりよい捜査のために組織を改革していこうとするけど、抵抗にあう様も書かれています。なかなか辛かったのではないですか。

服藤 (苦笑)

堂場 警察に限らず、組織をいじろうとして声を上げる人って、だいたいひどい目に遭うじゃないですか。

服藤 そうですね。これまでの環境が心地よいと思っている人がたくさんいるし、その中である程度結果を出してきたという自負を持っている人は、「どうして変えなければならないんだ」となる。

堂場 服藤さんは上司にはすごく恵まれてきたと思うんです。「とにかくやってみなさい」という人がほとんどで。ところが、服藤さんの立場が上がってくると、足を引っ張ろうとする人が出てきて。