契約書にサインしたのがすべての間違いだった
小泉氏がA子さんの“絵画プロジェクト”をたちあげたのは新型コロナウイルスが蔓延し、1度目の緊急事態宣言が発令された昨年4月のこと。小泉氏はコロナをテーマにした絵画作品を描くことをA子さんに要求した。A子さんは期待にこたえようと作品制作に没頭したという。
「連日深夜に、社長やYさんから引っ切り無しに電話がかかってきて社長の夢物語のような話を聞かされたり、作品に対しての意見を言われたのですが、2人とも絵画の知識がなく、無理難題が多かった。ある時はiPhoneの待ち受けにあるような、宇宙から見た地球の画を見せられ、『こういうのを描くべきだ』とリクエストされました。それもいい機会かと自分に言い聞かせ、頑張って描きあげました。
5月ごろ『プロジェクトをすすめる上で専属契約がしたい』と小泉社長にいわれ、契約書を作成することになりました。でも、その契約書にサインをしてしまったのが全ての間違いでした」(同前)
「契約は来年から」と口約束で言われたが……
小泉氏は契約書を2部用意していたが、A子さんの手元に契約書は渡されなかった。
「契約期間は3年、契約終了後2年は同業他社への移籍を禁止することが書かれていました。契約開始の期間は空欄だったと記憶しています。既に決まっていた画家としての仕事や個展の開催などについては、契約書に拘束されるものではなく、『好きにやっていい』『契約は来年度から』と口約束で決まり、サインをしました。契約書にサインをした後、社長は『次の仕事があるから』と契約書を2部とも持っていってしまいました。後日、『1部は私が保管したいです』と伝えたのですが、結局渡してくれなかった」(同前)
小泉氏に対し、徐々に不信感を抱いていったA子さん。その不満が爆発したのが、翌月の6月23日、六本木のカフェで行われた小泉氏、Y氏との打ち合わせの場でのことだった。