空気を読まないことをやる人間というのは、その場を壊します。だけどそこをまとめてくれるベテランはたくさんいるわけですから。場を壊す存在としてはすごく貴重だったんじゃないかなと思います。
——「空気を読まずに壊せ!」という空気は読む……高度です……。
青木 そうですね。「壊せ」っていう。できてたか分からないけど、それをいつもやろうとしてましたね。品川庄司の品川(祐)さんに「ダンプカーみたいなやつだな」って言われながら(笑)。でも、ちょっとキャリアを積んでくると、今度は違う役割になってくるじゃないですか。それが私は本当に不器用でできなかった。
——MCですか?
青木 まあ、MCはできないですね……。あと裏回しって言うんですか、ちょっといじったり、モノマネを振ってみたりとか。それが全くできないんですよ。カンペを出されてもそのまま読むことぐらいしかできなくて、応用も利かないし。
「なんでお前、芸人なのにきれいにしてるんだよ」
——この特集は、例えば容姿いじりがダメとか、年齢いじりがダメとか、社会からそういう要請が出ている中で、その役目を長く担わされてきた女性芸人たちはどんな風に当時を過ごし、いまどんなことを思ってらっしゃるんだろうというところからスタートしました。青木さんは芸人社会にそういった違和感をおぼえたりしていましたか?
青木 そうですね……当時私30ぐらいで売れたんですけど、その前はライブに出れば「今からテレビに出ようと思ってるの? おばさん」って笑われたりとか。「何なんだ……」と思ってましたけどね。まあ20代の子からすると私はおばさんだったり、容姿をいじられることもすごく多かった。
あと、「なんでお前、芸人なのにきれいにしてるんだよ」とか。
——ああ……。
青木 どういう発想?と思うんだけど。でも、それはさんざん言われてきました。私はきれいでいたいって思っていたので……というか私の場合は、そっちに寄せたほうが笑いにつながると思ったからそうしていたと思うんです。だから、きれいな格好をしてコントをやってたし。
——分かります。団地でエレベーターガールをするネタは、きれいだから狂気があった。
青木 そうなんです。それだけの話なので。だから「容姿いじりなんかして!」みたいな気持ちは全くなかったです。いい気持ちもしなかったというだけ。
ただ、いじるというのは、向こうも良かれと思ってやってくれている部分もあるじゃないですか。だから、「ありがとうございます」って言いながら傷つくって、意味が分からないなとは思ってはいました。
——「ありがとうございます」って言いながら傷つく。
青木 だからやっぱりこれでいいんじゃないですか? この時代で。違和感は、私はずっと感じてました。好きな芸人さんに容姿のことをいじられて、「今日はありがとうございました」って言いながら、心の中では「やだな」と思う、複雑な感情があったから。
その人にも言えなかったし、かといってどこにも愚痴れない。だってその人も良かれと思って言ってくれてるわけだから。