——今「あの時代に、私の性格」というお話をされましたが、あの時代で青木さんだからフィットしたと感じる部分はどんなところでしょうか。
青木 何ですかね……私、急に売れてたんですよ。正直ほんとにそんな感じで。当時は「誰も言えないことを言ってくれた」みたいな、そんな感じのことをよく言われましたけどね。「負け犬」みたいな言葉が流行っていて。
——「30代以上・未婚・子なし」のことを書いた『負け犬の遠吠え』(酒井順子著)ですね。
青木 その負け犬が急にキャンキャン言い出したら、面白かったっていうことじゃないですか。
タブーなしで、誰か私をいじってほしい
——女性芸人の数もすごく増えて、価値観も当時に比べると変わりつつある。青木さんが今のお笑い業界にまっさらで飛び込んでいくとしたら、どういう戦い方をすると思いますか?
青木 全然分からないですね(笑)。まず戦うにはテレビを見なきゃ。
この本(『母』)の帯に「憎んでたんじゃない、愛されたかった」っていうフレーズがあるじゃないですか。うちの娘なんかは、これを友達と一緒にギャグみたいに唱えて、「ママ、これヤバくない?」って笑うんですよ。
——新しい(笑) 。
青木 「ママこれ言ったんだよね、編集部の人に。どういう顔して言ったの?」って笑うわけですよ。ってことは、これも若い子にしてみたらギャグになるのかって。でも、そういえば昔も本当に思っていたことを言ったらみんなが笑ってたんですよね。だからこれなのかもしれないね、いま(笑)。「憎んでたんじゃない、愛されたかった」なのかも。
——娘さん、メチャメチャセンスあるな~(笑)。
青木 センスあるんだか何だか。恥ずかしいです!って思うんですけど。
——いいですね。軽やかで。
青木 軽やかだとは思います。私は、たとえば「出産してる」「離婚してる」「40代後半」っていうのがありますよね。あと病気もしてます。それって全部「お前、笑えないよ」っていうことだったりすると思うんです。かつてはね。
でも、やっぱり人って死ぬまでユーモアが必要で、「笑えない」っていうのも固定観念じゃないですか。私はそれでもそこを背負って、誰か私をいじってほしいなって思うんです。タブーなしで。
——タブーなしを手に入れました……!
青木 そうでしょう? タブーなし。誰か力ある人にいじってほしいなって思います。若い才能がある人に。私は、人によって生きるんですよ。青木さやかという人間は。
——出産して、離婚して、40代後半で、病気も経験した、団地のエレベーターガール、見たいです。
青木 それなら割とすぐできます(笑)。
【エッセイを読む】「あっという間に数万円が出てくる」消費者金融が2社、3社と…20代の青木さやかを呑み込んだ“闇”
写真=榎本麻美/文藝春秋
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