——それを愚痴ってしまうと、自分が芸人じゃないというか、芸人として認めてもらえないんじゃないかって思ってしまう。
青木 そうなんですよね。冗談通じないなコイツって思われる。でも、冗談通じないっていうことが私は売りだったわけで。冗談通じないっていうキャラクターだったのに、本当に冗談が通じないということになっちゃうと、もう降りるしかない。
かつてと同じことはできない…「キレ芸」の難しさ
——なるほど……。
青木 怒るっていうこと自体が、そういう難しさをはらんでるんだと思うんです。たとえば自分がモテなくて、アナウンサーにもなれなくて、お金もなくて……その時は本物のアナウンサーに対して怒ってました。もちろん本気で怒っているわけではないですよ。でも、そこはカタチとして見やすかったですよね。
でも、私のほうがお金を持ってて、彼氏もいます、子どもも生まれた……みたいなことになってくると、そんな人間が誰に怒って笑いが起きるかって非常に難しくなってきますよね。それでも怒り続けろとなると、その矛先は社会問題になってくる。
笑いが起きるから怒ってたはずなのに、世の中を斬る、世相を斬るみたいなことになってくると、「いやいや、ちょっと待ってよ。どういうことだ?」って。もう「怒る」を捨てざるを得ない。
——お客さんの反応も「笑い」ではなく「さすが!」みたいになってくるわけですもんね。
青木 そうそう。そこまで新聞も読んでないから、斬り方も分からないんです。
私は「お前が何言ってんだよ」っていう、絶対人は怒らないところで怒ってきて笑いにつなげてきた人間なのに。何か地位を持ってしまうと、笑いの手段としての「怒り」は持てなくなるんだなと、私は思いました。
逆に(カンニング)竹山さんとかと話してみたかったなって思いますね。
——キレ芸をずっと続けてらっしゃる。
青木 でも、あの人は男だからなのかなぁ。やっぱり女性って女性を見る時に、この人はいくつで、どういうバックグラウンドがあってということを同時に見ると思うから。そうなった時に、かつてと同じことはできない。
——今まで何人かの芸人さんにお話を伺ってきた中で、今青木さんがおっしゃった「芸人として感謝しながら傷つく」というのが一番腑に落ちた気がします。
青木 でもこれを言っちゃって、仲のいい先輩に「青木、そんなこと思ってたんだ。あの時はごめんな」って思ってもほしくないな(笑)。
——ああ……。
青木 すごい複雑ですよね。あの時代だからというだけだと思うんです。あの時代に、私の性格、だった。私に余裕がなかったんですよ。でもそれを受け入れたのは私なんだから、「青木ごめんな」って誰一人にも言ってほしくないと思うんです。