「芸人・青木さやか」の成功は、青木さやか自身を幸福にしてくれるものではなかった——何がなんでも売れたいと思っていた彼女が、ブレイクで手にした新たな「孤独」。芸人として笑顔で受け入れなくてはならない容姿いじりや年齢いじり、そして青木さやかを青木さやかたらしめていた「毒舌」は、いつしか彼女自身を蝕んでいく。
青木さやかが自然と背負っていた様々な“タブー”は、今彼女に何をもたらしているのか。憎しみが愛に変わる「笑い」の処方箋。(前後編の後編/前編を読む)
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人の評価は、私を満たすものではなかった
——成功ということを考えると、それが青木さんにとっては、みんなに面白く思われたいということだったのか、有名になりたいということだったのか、お金が欲しいということだったのか。
青木 間違いなくお金は必要でした。あとは、みんなが私を知れば私の孤独は埋まると思ってました。それは関係ないんだって、有名になって気づきました。でも、その時点ではもう降りられなかった。
——孤独が埋まるどころか、どんどん追い詰められていく。
青木 そんな忙しい時には、それこそ自殺でもしないと降りられないという感じはありますよね。どうしよう降りられない、って当時は思ってました。
——売れてくれば、自分にかかわっている人数も増えていく。
青木 そうです。「お願いだから仕事減って~」と思いながら、毎日。どれだけ私って才能あるんだろう、って思いながら(笑)。ほんと頭おかしかったと思います。「お前、絶対言うなよ、それ」って友達には言われてました。
——売れるということは、周囲からの評価が高いということだと思うのですが、そこで満たされることはなかったですか?
青木 自己肯定感がないからか分からないですけど、人の評価なんて全く私を満たすものじゃなかったです。
——誰かのためだったら頑張れるけど……。
青木 そうですね。それしかなかったかもしれません。
——たとえば当時の自分に今の自分が声をかけるとしたら、なんて言いたいですか?
青木 一回有名になって、お母さんのことも含めて失敗をしたけど、人はまた立ち上がれるんだっていうのは、今はすごくわかるし、こうやって立ち上がるためにかつてがあったのかなというふうに思ったりもします。だから、そんなに未来は悪くないって言えるかもしれません。
かつての自分に言うのであればね、未来は明るいと。でも、だいぶ大変な道のりはある。
——「あなた、もうちょっとこうしたほうがよかったよ」という、ネガティブなものではない。
青木 ないです。ただ、当時は気づけなかっただろうなというのもあります。痛い目に遭わないと。
「空気を読んで空気を読まない」を心がけた
——芸人界と青木さんはどういうところが相性がよかったんだと思いますか?
青木 「空気を読んで空気を読まない」ということを私は心がけていました。ベテランになってくると、空気を読むことしかできない。新人のうちだけだと思うんです、空気を読まないでいいって。