今、女性芸人の世界が揺れている。女性芸人といえば、当たり前のように「ブス」「デブ」「非モテ」をいじられ、そこで強烈なインパクトを残すことが成功への足がかりとされてきた。
しかし、持って生まれた容姿や未婚か既婚かどうかの社会属性などを「笑う」ことに対して、今世間は「NO」という意思表示をし始めている。「個人としての感覚」と「テレビが求めるもの」、そして「社会の流れ」。三つの評価軸の中に揉まれながら、女性芸人たちは新たな「面白さ」を探し始めている。
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二人とも「なぜあのネタがあんなにウケたのか、分からない」と首をひねる。おじいさんとダッチワイフがイチャイチャする、「ダメよ~ダメダメ」は文字通り一世を風靡した。
現在は単独ライブやYouTubeチャンネルで、自分たちが「面白い」と思うネタを模索し続ける日本エレキテル連合。熱心なファンの間では「あのブレイクがなかったらもっと正当に評価されたのではないか」とくすぶり続ける「細貝さんと朱美ちゃん」問題。流行語大賞まで勝ち取ったあのネタの真実。(3回中の第1回/2回目を読む)
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「見た目で笑かしてる」のか、「インテリジェンス」なのか
——タイタン所属の女性芸人はエレキテル連合さんだけですか?
中野 女性と、お猿さんのコンビはいます。ゆりありくっていう。
橋本 それ以外は私らぐらいですね。
——「タイタンは女性芸人を入れない」という噂は本当ですか?
中野 私たちが入った頃は……社長がそういうふうにおっしゃってましたね。なんでだっけ。理由。
橋本 何だっけ……。
——この特集の初回に山田邦子さんに出ていただいた時、当時の太田プロの社長さんは「女芸人はめんどくさいから入れない」という方針だったと話されてました。
中野 めんどくさいかもしれないですけど、社長の理由はそうではなかった。女性タレントに汚れの仕事をさせたくないとか、そんな理由だったと思います。
——タイタンはそれ以外にも「芸人のネタにダメ出ししない」とか、ユニークなルールがありますよね。よく爆笑問題の太田光さんがそのことを話されてる。
橋本 本当にそうなんです。ダメ出しされたこと全然ないです。
——逆に「してくれよ」って思うこともありますか?
中野 たぶん聞いたらしてくれるかもしれないけど、怖くってとてもじゃないですけどそんなこと聞けない。
橋本 聞けない。
中野 でも、相談には乗ってくれます。
橋本 爆笑さんは、後輩たちのネタをいろいろ見てくれてると思います。こっそり。でもアドバイスとかはないよね。
中野 ないね。
——エレキテル連合さんのネタは、アドバイスも難しそう……。
中野 いえいえ、何も。見た目で笑かしてるだけなんで、難しいことは全然してないんです。
橋本 そうそう。
中野 難しいこととか、インテリジェンスなことをしてるみたいに……ありがたいことに思ってくださる方がいるんですけど、二人ともバカなんですよ……。
橋本 全く深い意味とかメッセージもないし。
中野 何もないんです。でも、メッセージをその人なりにくみ取ってくれて、消化してくれて、「そういうことですよね」って言ってもらうと、うれしくなって「そうなんです」って乗っかっちゃって、エラそうな感じにしたことは何度もあります。
この取材もそうそうたる女性芸人さんがいる中、早いターンで回ってきて、ほんと恐縮です。