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「センシティブな『性』の話題をいかにして話してもらうのか」  “女性間風俗”オーナーが語る「対話の場」の重要性

2021/06/13

「実体験から得た理解力」があることがカギ

  初回セッションに参加したクライアントは、恋愛に関してマイノリティ性を持っていると、“一般”のカウンセラーやコーチに対して本当に話の核が伝わっているか疑問になることがあったとコメントしていた。「ただ愚痴をこぼすなら性別を変えるとか、ぼかして話しても通じるけど、関係性を改善したいレベルだと詳細が必要になってくるし、話したところで理解できなさそうだと感じてしまう」ということらしい。たしかに、異性パートナーとの過ごし方と違って、同性パートナーとの過ごし方は社会の理解が追い付いていないこともあり、直面する課題も特有のものであったりする。

 たとえば、クライアントが同性パートナーとの関係性に悩んでいて、恋人として紹介できる場面が限られてしまったことが原因ですれ違いが起きていたとする。そもそも異性カップルの場合、婚外関係などの事情を除いて、自身のパートナーを他者に紹介できない場面はそう多くないのではないだろうか。

 そもそもなぜ恋人として紹介できないのか、紹介することでどのような困難が想定されるのか、それ以外の場面でも恋人らしい振る舞いが制限されているだろうという見立てなど、社会的背景から引き起こされる感情を即座に想像し、対話に織り込むことができなければ、その先にあるクライアントの深層心理まで扱うことは難しい。どんなカウンセラーもコーチもプロとして磨かれた傾聴技術を持っているが、そういったマイノリティの窮屈さや独特の文化を肌感覚で理解していないと、クライアントは事情の説明から始めなくてはならず遠回りだ。自分の深いところにある話を他者にすることは並々ならぬ気力が必要な作業だし、時間も限られているから、クライアントにはなるべく自分の感覚を話すことや感じることにだけ集中してもらいたい。大学でセクシュアリティについて専攻したことや、リリーヴでさまざまなパートナーシップの在り方を聞いてきたことが、ここでとても役立っている。

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カウンセラー相手でも躊躇してしまう「性」の話題

 また、マイノリティ性を帯びていなくとも、自身の性生活や行為自体について話すこと自体、傾聴のプロが相手でも躊躇してきた人もいる。「性」を話題にすることがタブー視されやすい日本で、しかも一般論ではなく自分のリアルな性体験について取り扱うことは、相手が自分に対して持つ印象を一変させてしまうのではないかという恐怖さえ感じるし、そこまでではなくともなんとなく気まずい空気が流れることもある。その点、風俗の現場で働くわたしには「性」が日常的な話題だから、気後れする必要がなくフラットに話せると思われているようだ。

 Cozy Dialogueではセッションの後に、その日話した内容や話し方の特徴・言葉の使い方から伺えるものをまとめたレポートを送信し、次回のセッションまでの行動や思考に役立ててもらう。隔週程度での定期的な利用を基本として自分のことをじっくり考える期間を作り、参加前よりも「じぶんに対して素直に居られる」状態を目指すという趣旨だ。