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2021/06/13

「身近じゃないからこそ」できる対話もある

 リリーヴも Cozy Dialogue も、その人の内面について話すからか、カウンセリングのような作用を期待されることがある。しかし、そのような人にはいつも、臨床的な意味と責任を負えないことを丁寧に説明し、時には利用を断っている。必要とされるキーワードくらいは提供できるが、精神科的な知識は実体験の分しか話せないし、わたしが相手の状態を判断すべきでないことは、どちらの仕事をする上でも一番気をつけていることだ。

 お試しの初回セッションを通じて、リリーヴでは出会えなかった人と、リリーヴとは違った関わり方で、新たな対話の可能性を見出している日々が嬉しい。世の中が落ち着いてリリーヴの予約が戻ってきたら、風俗キャストの自分との違いを、よりはっきりと見いだせそうなことも楽しみだ。

©Rimi Watanabe

 感染症の流行を抑えるために、人間の仕事が機械に置き換わることが今後は一層増えるだろう。セルフレジが増え、AIがおすすめ商品を教え、直接会話する相手が身近な人だけになる社会の訪れも近いのかもしれない。

 しかし、人間が存在する限り、誰かと接して関係性が生まれ、自分が何者かを語り、相手を知って自分も変化するというプロセスは無くならない。そのとき、「身近じゃないからこそ」できる対話が、あなたにとっての「きっかけ」になることを、わたしは確信しながら今日も対話している。横に置いてきたことや、急激な変化に向き合うのは大きな勇気と気力が要ることだと思う。それでも必要に迫られたとき、わたしを知った人に、「気兼ねなく話せそうな人がこの社会に1人くらいはいるのだ」と思ってもらえるような、頭の片隅に小さく光る可能性のようなものになれたら嬉しい。わたしが自分の過去の苦労を恨まず、生死さえ想像のつかない未来に向かって恐怖せず歩めるのは、必要としている誰かと対話でつながる尊さがあるからに違いない。対話は、相手が変化するきっかけであると同時に、「人生捨てたもんじゃないな」とわたしに思わせてくれる、大切な機会なのだ。

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