警視庁勤務、元警視総監秦野章参議院議員の私設秘書、土地開発会社経営、ドリーム観光副社長など、さまざまなキャリアを経て、バブル崩壊後は危機管理会社「日本リスクコントロール」を設立。これまでに築き上げてきた人脈を活かし、政治家、経営者、宗教団体、著名人など、あらゆるところから持ち込まれる相談・トラブルを対処・解決する伝説の人物がいる。その男の名は寺尾文孝氏。

 彼が「墓場まで持っていく」と考えていた財政界・芸能界の秘密を暴露した書籍『闇の盾 政界・警察・芸能界の守り神と呼ばれた男』(講談社)が話題を呼んでいる。ここでは、同書の一部を抜粋。秦野章氏からの命により、日本ドリーム観光副社長に送り込まれた寺尾氏が、元山口組系暴力団組長で、地上げ・土地を担保にした資金調達・株投資を繰り返し、企業の乗っ取りを企ててきた池田保次氏と対峙した際のエピソードを紹介する。(全2回の2回目/前編を読む)

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裏ガネで懐柔しようとする相手に言い聞かせ

 相手はヤクザだとはいっても、大株主でもあり、巨額の資金を貸し付けた相手でもある(編集部注:池田は自身が経営する仕手集団「コスモポリタン」の大量買い付けでドリーム観光の株を多く所有しており、グループ会社である雅叙園観光ホテルの乗っ取りを画策していた)。もしこの瞬間にコスモポリタンが倒産したら、ドリーム観光は巨額の損失を計上するほかない。時代はまさにバブルへと向かうころで、日本経済を取り巻く資金の流れは潤沢だったが、それでも株の買い占め合戦をしかける池田のような「仕手筋」は、いつ資金がショートしても不思議ではない。付かず離れずの関係を保つしかなかった。

 欠損した小指をサックで隠し、ビジネスマンを装った元暴力団組長の池田と、角刈り、口ヒゲの元機動隊員の私の奇妙な二人三脚が始まった。

各界の中枢に人脈を持つ寺尾氏

 池田と定期的に会う第一の目的は、ドリーム観光が貸し付けたカネの返済計画を立て、池田が持ち出した権利証と関連書類を取り戻すことである。のらりくらり返済を引き延ばそうとする池田と何度も食事をし、夜の店にも一緒によく行った。「もう逃げられない」と思わせるためだ。

 ふたりで食事しても、なるべく池田には支払いをさせないように気をつけていた。こちらはそのために月に500万円の交際費を認めてもらっている。