文春オンライン

2021/06/21

 そこで、ハッと目が覚めた。

「お前、俺を誰だかわかってんのか! 俺は警察そのものなんだぞ!」

 よくよく話を聞くと、池田から事前に500万円もの大金を受け取っていたという。私と寝れば、さらに500万円がもらえる約束になっているというのだ。女性スキャンダルをでっち上げて私を嵌めようとしたのだ。池田は早紀が働く店に行ったことがないはずで、私が早紀と親しいとなぜわかったのか、そのあたりの情報収集力や一般人では真似のできないカネの使い方はある意味大したものだった。

 早紀はこんな内情も明かした。

「私、店にバンスが80万円あって、もらった500万円の中からそれを返しちゃった」

「バンス」とはアドバンスの略で、前渡し金のことである。

「お前、池田にすぐカネを返さないと大変なことになるぞ。明日、80万円持っていってあげるから、池田に500万円を返してこい」

〈騙されてるのかな〉との不安もよぎったが、翌日私は約束どおり80万をわたした。

寺尾氏は政財界の駆け込み寺と言われた

 1年後、東京・銀座を歩いていると、「寺尾さん!」と声を掛けられた。振り返ると、早紀である。

「あのときはお世話になりました。いま、銀座のお店にいるの」

 早紀はそういって、名刺を出した。もし本人にやましい気持ちがあれば、私に声をかけてくることもなかっただろう。やっぱりあのとき、早紀が言っていたことは本当だった――ホッと息をついた。

けっして請求書払いやツケで飲もうとしない理由

 大阪・北新地を練り歩く池田はいつも財布に現金を100万円くらい入れていた。馴染みの店で勘定をするときは財布ごとママに渡す。ママのほうも何も言わず受け取ると、しばらくしてまた何も言わずそれを池田に返していた。

 あるとき、池田は財布から現金を抜き取ると両脇のホステス5人ほどに「おい、チップだ」と3万円ずつ景気よく渡しはじめた。金払いを気にしない豪傑を装っていたのだが、その実池田が実にカネに細かく、汚いことを私はよく知っている。

「ふざけんな! おい、それ全部回収だ」

 ホステスたちからカネを取り上げ、池田に投げ返した。

「もうちょっと真面目にやれ!」

 池田には毎月10億円ずつの手形を切らせ、返済してもらう約束で話がついている。しかも、それは滞りがちだった。たとえ5万、10万でも、本来は日本ドリーム観光から貸したカネだ。「債権者」の私が怒るのは当然だろう。そんな借金まみれのくせに、なぜそんなにカッコつけようとするのか、池田に聞いたことがあるが、そのときの答えが忘れられない。