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「ボーガンを撃った後、包丁で首を刺した」

 部屋の隅で樽井被告はボーガンを夫に向けた。この体勢で夫が目を覚ましたらと思うと、余計に焦ったという。頭を狙い、引き金に指を掛けると、目をつぶった。

樽井被告 「『バン』という音がして、夫が痛がる声がしました。目を開けると、夫が頭を押さえて痛がっていた。本当に当たったのかと。ここまでしたら自分が殺されるんじゃないかと思い、台所に包丁を取りに行きました。予備の矢のことは浮かびませんでした。混乱して余り細かいことは覚えていないのですが、包丁で首を刺しました」

樽井被告 「抵抗され、包丁を取り上げられ、それで通報しました。『何で私ばっかり悪いんだろう』みたいなことは言ったと思います。今はすごく申し訳ないことをしてしまったと思います」

樽井被告が犯行前に見ていたとされる動画には、ボーガンで電化製品を撃ち抜く様子が映されていた

 証人として出廷した夫も撃たれた瞬間の状況を語った。

 「夏は暑くて冷房の効いているリビングで子どもを寝かす。狭いので私は1人寝室で寝ていました」

 スマートフォンのアラームで一度目を覚まし、再びまどろんでいたその時だった。

 「頭部に衝撃というか。熱い。同時に破裂音がして痛みが来ました。上半身を起こして『いたー!』と叫んだ。感じたことのない痛み。耳元で爆竹を鳴らしたような音がして、最初はケータイが爆発したのかと思いました」

「ここで俺が死んだら、子どもも自分もどうなるねん!」

 夫は、頭を触った自分の手にべったりと血が付いているのを見て、理由は分からないが、けがをしたことは分かった。

夫 「妻が『大丈夫?』と言いながら寄ってきて、頭を触ろうとした。『触るな。触ると痛い!』と言いました。その後、ちょっと時間があって、妻はクッションを持って乗りかかってきました。自分はうつぶせになり肘を立てて上半身を支えている。(妻が)何をしたいのか分かりませんでした。口を押さえられ、『ごめん』という半泣きの声が聞こえて、何かを押しつけられたような、注射器のような痛みがしました」

現場となった兵庫区夢野町のアパート ©文藝春秋 

 直後、体に「ドン」と衝撃が走った。

夫 「一瞬何があったのかと思ったけど、視界の端に包丁が見えて刺されたと分かりました。妻の手首を押さえて動きを止めようとしました。妻は泣きながら『こうするしか……』という感じ。『ここで俺が死んだら、子どもも自分もどうなるねん!』と言うと、包丁を下ろしました」

夫 「『何でしたんや?』と聞くと、妻は『全部私が悪いの』と。『包丁は分かるが、この頭は何をしたんや?』と言うと、妻が矢をリビングから持ってきた。海外ドラマやゲームでみたことある。これは隠しきれないなと思いました」