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パの強打者たちを斬った“死神の鎌” 中日・橋本侑樹のスライダー進化論

文春野球コラム ペナントレース2021

2021/06/17
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1度目の肩作りで必ず「13球」しか投げない理由

 今年始めたルーティンもある。中継ぎ投手は序盤から、試合展開によって何度かブルペンで肩を作り登板に備える。橋本の場合、1度目の作りで決めていることがある。それは必ず「13球」しか投げないことだ。背番号を意識して、ではないそうだ。

 今年2月の沖縄キャンプで、前田章宏ブルペン捕手から「毎日投げる感覚を一定にして状態を見極めるのも一つ」と提案を受けた。

 昨年までは1度目の作りで18~20球。投げる球種の順番はほぼ変わらないが、不調の球を何度も投げてしまった。「今は、悪くても『今日は曲がり幅大きいな』とか『高め抜けるから気をつけよう』と冷静に分析できるようになってきた」と、橋本は効果を実感している。

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 最近はフォークを封印してツーシームも習得した。中継ぎの経験も豊富な阿波野秀幸投手コーチと、近鉄で長年守護神を務めた赤堀元之投手コーチから、「プロは落ち球についてくる。スピードが速い落ち球も覚えておいた方がより有効的」と助言をもらった。元々フォークは130キロ台だったが、現在はより打者を惑わすため140キロ台のツーシームを操っている。

 それでも、同コーチは「まだまだ。真っすぐで空振りがとれなきゃ。パ・リーグは初見だったから。交流戦が終わって、再びセの打者を相手に内角へ強い真っすぐを投げて三振を取ってこそ、そのスライダーが生きてくる。これからだよ」と言う。そう、まだ課題も山積している。

 今年入籍した奥様の手料理が楽しみで(特にハンバーグ)、ナイター後、ドームを出る時は必ずLINEをして自宅へ帰るという可愛い一面もある。未婚の岡野祐一郎とともに昨年末、結婚指輪を買ったときは、支払い時にカードの上限に引っかかり、慌ててATMへ走ったりするおっちょこちょいなところもまた愛らしい。

 宿命づけられた背番号13への期待。一歩一歩確実に、頂へと進んでいる。

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