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検察官の捜査は不十分

 同審査会は、17年12月1日から6日ごろまでの間、この業者では犬猫385匹を狭いケージに入れるなどしていたと認定。議決では、▽狭いケージに入れる▽コンクリートブロックのマス内に50匹以上の犬を過密に入れる▽エサやりの際に片手でケージ内の犬の首根っこをつかんで引っ張り出した上で別のケージやマス内に入れる――という行為について、動物愛護法が規定する虐待にあたることが「十分に考えられる」と判断した。

 また検察官が、福井県の行政獣医師の供述に依拠して「虐待に該当しない」と判断したことについて、「第三者の獣医師の意見を得たり、現場を視認した者から事情を聴いたりする等の捜査を行っておらず、検察官の捜査は不十分と言わざるをえない」とも指摘した。同審査会が指摘した「行政獣医師」について、福井県は、問題が発覚した当初、取材に対して、17年11月29日にこの獣医師が1人で4時間弱かけて約400匹の犬猫を見たが、「すべて健康な状態で、問題のある犬や猫は見受けられなかった」としていた。

 なお、働いていた飼育員の女性2人については、「刑事処分の対象とする必要まではない」と判断し、「不起訴相当」とした。

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 福井地検は19年10月25日、代表者(当時)の男を、動物愛護法違反(虐待)についてはやはり嫌疑不十分だとして再び不起訴とした。

あいまいさが招く悲劇

 ほかにも茨城県内では2018年2月下旬、グレートデーンなどの大型犬を取り扱う繁殖業者からボランティアらが一部のやせ細った犬を保護した。

 業者を所管する茨城県動物指導センターは「犬猫の飼育管理に関して明確な基準がない。業者を信じて、粘り強く指導をしていくしか方法がない。現状では、自治体にできることには限界がある。動愛法に数値規制を入れてくれれば、きめ細かい指導ができるのだが」とする。やはり、動物愛護法が機能していない。

 静岡県でも問題が起きた。静岡県焼津市内の県道沿いに建つ戸建て住宅。18年7月中旬に訪ねると、その敷地内に甲斐犬の成犬が24匹、多くがケージに入れられたまま取り残されていた。

 所有者は、70半ばの一人暮らしの男性。これらの甲斐犬を使い、長く繁殖業を営んでいた。地元紙などに広告を出し、1匹16万円ほどで甲斐犬の子犬を販売していたという。男性のほかに従業員はいない。

写真=筆者撮影
静岡県内の繁殖業者。甲斐犬にとっては十分といえない大きさのケージで飼育されていた。一部の犬はケージから出せず、排泄もケージ内でさせるしかなかった。 写真=筆者撮影

 ところが18年6月下旬、男性は転倒して、そのまま入院してしまった。親族によると、意思疎通が図れない状態が続いた。主治医は「失語は避けられず、麻痺も残る。今後も意思疎通は無理かも知れない」とみているという。