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“誰にも相談できない状況”に追い込む技術

 たとえば、ある40代男性は4回にわたり、情報料名目で200万円以上を騙し取られた。

 70代男性は、業者から「抽選前に2等(6個の数字のうち5個が一致し、さらに申込数字の残り1個がボーナス数字に一致:理論上の当せん金額は約1500万円)の当せん番号が手に入る」と電話で持ちかけられた際、業者は2等の当せん番号を伝えて、男性に翌日の新聞で確認させている。

 翌朝、男性が新聞を見ると、確かに業者が言った番号が2等の当たり番号になっていたので、男性は業者を信じてしまい、8回にわたり約2700万円もの情報費用を払ってしまった。

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 これはネットですでにわかっている当せん番号を高齢者に教えて、当せん番号が事前にわかると信じさせて金を騙し取る、時間差を利用した手口である。

 サギ師が使っている手法は、ものの見方に色眼鏡をかけさせるやり方である。

 今は情報化社会である。顧客情報が流出したというニュースがたびたび取りざたされており、過去には名簿などの情報漏えいをしたとして逮捕される事案もあり、多くの人が個人情報の取り扱いに敏感になっている。

 もし自分が漏えいに加担をしたなら、大きな罪が伴うという意識を持っている。そこでサギ師らは、私たちに「情報は秘匿するもの」という眼鏡を心にかけさせたうえで「違反したら、損害賠償を請求する」と脅してくる。これにより、消費者は、誰にも相談できない状況に追い込まれてしまうわけだ。

ビジネス書『7つの習慣』にも示されている「心の眼鏡」

 心の眼鏡について、的確に説いているのが、スティーブン・R・コヴィー著の『7つの習慣』(邦訳:キングベアー出版)である。ここには人がものを見るときには、ある種のレンズのようなもの(パラダイム)が存在し、それが自らの認識や行動、態度を決めていると書かれている。

 パラダイムとはモデルや地図のことで、私たちは、あるがままに物事を見ていると思い込んでいるが、実際には社会の中で条件づけされたレンズを通して見ており、これが私たちのすべての行動を方向づけているというのだ。

 前出のロト6に絡むサギ師たちは自分たちに有利になるようなレンズ(情報の守秘義務)を相手の心にかけさせて、繰り返し金を騙し取っているのだ。