——おかしなことというのは?
光浦 私、別に後ろ向きなことを言ったつもりはないのに、いつも「後ろ向きだね」って言われるんですね。「ネガティブだね」って言われるけど、ネガティブなこと言った覚えはない。普通に思いついたことをしゃべっただけでそうやって言われる人間なんですよ。
それが土曜の8時のメジャーな番組に出るって、絶対フィットしてないじゃないですか。おかしいじゃないですか。
——明るい番組に……。
光浦 そう、明るい番組ですよ。実際電飾だって明るかったもん。土曜8時だからライト多めにしてあるって言ってた。メッチャ明るい。白い明かりの中に。
——その真ん中に光浦さんはいた。
光浦 そうよ。普通に元気よく笑ってるのに、なんで「機嫌悪いの?」っていつも言われてしまうのか。これ以上笑えないぐらい笑ってるのにっていつも思ってました。
私は「ドキュメンタリー部門」だった
——「こうやったらウケる」とか「こうやって笑わせたい」とか、そういうことじゃなかったんですね。
光浦 私はドキュメンタリー部門のほうに所属させられたので。『めちゃイケ』でもコント部門、いわゆる演じる人部門とドキュメンタリー部門とに分けられたんです。ド素人の時に、ひよこの段階でピョピョッて選別された。ドキュメンタリーのほうは、常にリアルに怒ったり、リアルに笑ったりっていう、そっちのほうです。
そっちに入れられたのは、男だと加藤(浩次)さん、濱口(優)もドキュメンタリー部門かな。よゐことやべっち(矢部浩之)はちょっと微妙にニュートラルなところだけど。
——なるほど。
光浦 岡村(隆史)さんは完全にコメディ部門でしょう。いろんなキャラクターでイケる。で、山さん(山本圭壱)もそう。大久保(佳代子)さん、雛形(あきこ)もそう。(鈴木)紗理奈は私と一緒でドキュメンタリー部門。
——すごいな……。
光浦 そうやって分けられたから、もともとキーッとなるほうではありましたけど、ドキュメンタリー部門ではその「キーッ」をさらに大きくしてっていうのが使命としてありました。
自分の中にあるキャラクターの1個を求められて、ビューッと広げているので、それは嘘ではなかったんです。ちょっと不正を見つけるとヒステリックに怒ってみるとか、自分の中にもともとあるものをギューッて可能な限り広げてましたね。
だけどやっぱり、長いことギューッとやりすぎて、どこかちょっとバランスが悪くなった。
——その一部分を広げたものを「自分」として周りから認識されることに、苦痛を感じなかったですか。
光浦 一時ありましたね。あまりに意地の悪いセリフとか、あまりにただ意地悪を仕掛ける役とかだと、嫌だなっていう時はありましたね。番組が終わって、今はそれを無理して広げる必要がなくなってきたんです。それでヒューッと閉じ始めたら、好感度が急に上がってきて(笑)。
——ドキュメンタリー部門の使命を終えたら(笑)。
光浦 たぶん不自然さが抜けたのかね。悪役をやっても善人をやっても不自然は伝わるんじゃないのかな? 嘘くさい感じとか、無理してる感じがね。
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撮影=鈴木七絵/文藝春秋