50歳になりまして』(文藝春秋)の大きなテーマでもある「老後」。光浦靖子が老後を考える時、最初にしたのが自身の「子育て」だった――。

「自分のことばっかり考えていた」光浦が、敢えて自分にとって「茨の道」を選択するのは何故なのか。彼女を前へ前へと突き動かす「怒り」の正体とは。年齢との折り合いの付け方、女友達と良好な関係を築く秘訣……老後と向き合うために必要な、人生の「おさらい」方法を訊く。(全3回の第3回/第1回から読む)

光浦靖子さん

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永久就職を信じていた世代が共感してくれた

——この本のきっかけになった『文藝春秋』のエッセイは、本当に多くの方に読まれて。光浦さんのようなキャリアがある人でも、「不安」を抱えてるんだなって、当たり前なんですけど。そこに共感が集まったのではないでしょうか。

光浦 みんなやっぱりね。だって、永久就職、誰もできないんだもんね。うちらが子どもの時は、1個職業に就いて10年ぐらい死に物狂いで頑張れば、一応定年までは会社が面倒を見てくれた。そういう親を見てた世代だから。

——そう信じてました。

光浦 信じて頑張ってたら、そうじゃないのか、って私はなりました。「明日クビになるのかい」とか「明日仕事なくなるのかい」って。

 共感を持ってくれたのは、たぶんオーバー40とかそっちのほうの人かもしれない、もしかしたら。それより下の子たちは最初から、リーマンショックやら不景気やらを知ってる。バブルがはじけた後に生まれてる子たちはきっと「永久就職できるわけないだろ」って身をもって知ってるんじゃないですか。

——永久就職なんて思ってもないかもしれません。

光浦 うちらは途中まで信じてたから。だからまだ、なんかあたふたあたふたしちゃう。40代、50代の方たちは。

年齢と折り合いをつけるための『おばあちゃん育て』

——私なんかまだ大人になったという感覚も薄くて。もう40過ぎて全然大人、なんなら老後の方が近いというのに、大人という実感も持てないままここまできちゃいました。

光浦 そうなんですよ。私も50歳になったってビックリします。まだ26歳ぐらいの感覚。あと、老けた服なんか着たくもないし。まだ全然若い服着れるし。

 

——商店街にあるブティックの服とか、いつかこういうのを着るようになるのかなって思ったけど、気持ちが追いつかない。

光浦 着ないですよね。いまだに「ちょっと大人っぽい」と言っちゃいますもん。50歳になっても「ちょっと大人っぽいかな」って。

——いつ自分の年齢と折り合いがつくんだ、みたいなことを思っていたので。本に出てくる『おばあちゃん育て』という言葉に衝撃を受けたんですよね。

光浦 そうそう。親が私を育ててくれることはもうないし、周りを見ても、誰も私のことに責任持ってくれそうにないから、そうなったら自分が自分を守り育てるしかないわよ、と思いました。それが『おばあちゃん育て』です。