――書いていて、恥ずかしい気持ちはなかったですか? この部分は見せたくないな、隠しておきたいな、という。
光浦 あんまりなかったかな。もしかしたら私は何も隠すことはないのかな。
前世は冤罪で処刑されたんじゃないか
――それは50歳を迎えてそうなった感じですか? それとももともと?
光浦 もともと、隠してるとなんかわからないけど気持ち悪くて、負い目を感じちゃうんですよね。嘘の感情でしゃべってるのが。それが大人なんですけどね。それが大人だし、円滑に物事を進めるためには必要なことなのに、その一歩ができなくて。
だからこの世界でよかったな、みたいなところはあるんですよ。普通の会社だったらとっくにつまはじきになってると思う。だからバイトいっぱいクビになったんだろうな、今思えば。
――嘘をつけなかったから。
光浦 どっちかというと目先の気持ちよさを取っちゃうタイプなんです。私にとって目先の気持ちよさは、嘘つかないことでした。
――本の中にも「嘘嫌い」のエピソードはたくさん出てきます。
光浦 嘘が本当に駄目なんだよな。それってたぶん前世の影響じゃないかなと思って。
――前世ですか?
光浦 前世の私は冤罪で処刑されたんじゃないのかな。こんなに嘘が嫌いなのはおかしいなと自分でも思って。
――「嘘が嫌い」というとちょっとかっこいい感じもしますが。
光浦 いや、わがままっちゃわがままなので。このわがままをどこまで通せるかというのはね。上手に知恵をつけながら。
――視聴者から見たら、芸能界って嘘ばかりなんじゃないか、嘘というか、虚構というか、まさにリアルコントみたいなイメージがあると思います。でも、光浦さんはいわゆる一般企業よりも、自分の性格は芸能界でより生かされたと思った。
光浦 芸能界は嘘だもんね。コントとかお芝居だもんね。「さあ、嘘をやるよ」っていうのを真剣にやるっていう。嘘の設定を嘘つかずにやるっていう感じの、なんかちょっと変な感じだもんね。
――「嘘をつく」ことに関しては嘘ついてない。
光浦 みんなで「さあ、嘘のことをやるよ」といって、「はい」って、そこから本気でやるじゃないですか。「この芝居はよくないと思う」なんて、しょせん嘘の芝居なのに。芸能界は、なんか変な世界なんですよ。
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撮影=鈴木七絵/文藝春秋