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シングルマザーが逮捕されたら、子どもの面倒は誰がみるのか
警察官による取り調べの結果、トートバッグにある商品も盗んだと認めた女だったが、所持金は20円ほどで商品の買い取りはできず、立て替えてくれるような人やガラウケも用意できないと話している。このまま被害届が出されてしまえば女は逮捕され、しばらくのあいだ留置されることになる。そうなれば、子どもの面倒をみるのは誰になるのだろうか。重苦しい状況のなか、一家の将来を左右する被害申告の判断を迫られた女性店長が頭を悩ませていると、それを眺めていた女の子がビニール袋から1本のチュッパチャップスを取り出して言った。
「これ、どうぞ!」
「……ありがとう」
自分の店で盗まれたチュッパチャップスを差し出された女性店長は、それを受け取ると警察官に被害申告しないことを告げて、女に出入り禁止の誓約書を書いてもらうよう私に指示した。盗んだ商品は、私の現認不足を理由に返却を受け付けないことにし、子どもが食べてしまったチュッパチャップスの支払いも求めないと言う。
むせび泣く母親
「娘さんに救われたこと、忘れたらダメですよ」
店長の優しさにふれた女は、低い声で嗚咽を漏らすと顔を覆って泣き始めた。
「これ、どうぞ!」
最後のチュッパチャップスをむせび泣く母親に差し出す女の子の純真無垢な目は、いまも忘れられない。
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