明け4歳の京都記念でナリタトップロードにクビ差先着、菊花賞の雪辱を期した和田に道が開ける。続く阪神大賞典でナリタトップロードに2馬身半差をつけ、勢いに乗って春の天皇賞を制した。この時、和田は不甲斐ない結果ばかりの自分を信じて乗せ続けてくれた恩師の嬉しそうな顔を見て「ジーンときた」と語っている。
馬を気分良く走らせ、余計な動きをしない騎手が信頼できる
騎手として自信を取り戻した和田はこの年、オペラオーで宝塚記念、秋の天皇賞、ジャパンC、有馬記念とGⅠを5勝。史上初めての秋古馬三冠制覇を遂げた。
5歳初戦の大阪杯を4着に敗れ「そろそろ下り坂か?」と感じたのも束の間、続く天皇賞を制して春天を連覇。宝塚記念では初めてメイショウドトウに先着を許した際は「下手に乗った」と自分を責めたが、今思えば、和田の騎乗内容が下手だったというより、オペラオーの反応が鈍かった気がする。
これまで4歳以降のオペラオーに騎乗した和田に下手さを感じたことは一度もない。勝つほどマークがきつくなる中で、和田は結果を出し続けた。騎乗ぶりに派手さが感じられないのは、裏を返せば「馬の邪魔をしない」ことだとも言える。
ある中堅調教師に、こんな話を聞いたことがある。「大外をぶん回して勝つのは、ファンにとってはカッコいいかもしれないけど、俺たちにとってはヒヤヒヤもの。馬を気分良く走らせ、余計な動きをしない騎手が信頼できる。武豊なんて正しくそうだよね。後方待機のまま掲示板という騎手はゴマンといるが、それじゃダメなんだ。リーディング上位騎手は、GⅠでも未勝利でも同じように乗っている」
5歳秋。シンボリルドルフのGⅠ7勝を塗り替える勝利が期待されたが、秋の天皇賞はアグネスデジタルの2着、ジャパンCはジャングルポケットの2着。引退レースの有馬記念では5着に。レース前に「今まで散々助けてもらったから、今回は僕がオペラオーを助けたい」と語った。