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競馬界は人と人との関係が希薄になった
最後に、あるベテラン廐務員から聞いた話を書こう。「昔に比べ、今の競馬界は人と人との関係が希薄だよね。一部の大手クラブと有力馬主の方針に従うのは、強い馬を管理したいという市場原理から理解できるが、一度負けたぐらいですぐに乗り替えでは、若いあんちゃんが育たないよ」
30年前に250人弱存在した騎手も、今は140人。若くして引退する騎手も多い。「エージェント制度の定着により、有力馬主の言うことを聞くヤネ(騎手)が率先して乗っけてもらえる。昔は騎手が廐舎回りをして、テキ(調教師)や俺たちと関係性ができていたのに、そうした関係性も希薄になった。騎乗技術のあるヤネの騎乗数が減っている気もする」と、この廐務員は続けた。
翻って師匠と弟子の徒弟制度も希薄になった。もちろん今のシステムが悪いとは思わないし批判するつもりもないが、岩元師のように、馬主に啖呵を切ってまで弟子を優先する「昔気質の調教師」の存在は、長い目で騎手を育ててくれる気がする。
若い頃は大嫌いだった頑固おやじが、妙に懐かしく感じる今日この頃である。
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