会場内で10万円以上払うファンも
そしてその20枚近いチケットを会場で座席券に変えた後に一度回収し、自分が観たい席のチケットを抜いたうえで、購入額に応じたチケットを渡していったのだと思われます。
Aさんが座席券をもらうのに時間がかかったのは、代表者による“座席の品定め”が行われていた可能性が高いです。
さらにAさんの同行者は自分の座席が気に入らず、他の人との交換をしたのでしょう。推しが花道に来たときいちばん近い席がいいとか、遠くても推しの立ち位置ゼロズレ(真正面)の席が欲しいとか、人により求めるものは異なります。 ファン同士で利害が一致すれば交換が成立しますし、最前列にこだわって10万円を超える大金を払って交換するファンもいるのだと言います。
もちろん、事前に座席がわかる紙チケットの時代も“ファン同士でのチケットの交換”はありました。しかしそのほとんどは、公演日前に行われていました。その中で最前列が高額になったり立見席が値引きされたりということはあり、一部で“高額転売”が起きていたのも事実です。
高額転売をなくすための施策が裏目に
しかし、全ての席の価格が一律というのはやはり無理があり、その席ごとの“正直な価値”をファン自身が決めて、気持ちが満たされる席を調達して公演に臨む雰囲気があったのです。
そこでジャニーズは「入場するまで座席がわからなければ高額転売は消えるだろう」と考えました。しかし現在のシステムを導入した結果、起きたのは真逆の事態でした。
「だったら、座席がわかってからやりとりすればいい」と会場でチケットや金銭がやり取りされるようになり、結果としてより高額でチケットが転売されるケースが増えたのです。
すべてのチケットが“大当たりするかもしれない宝くじ”みたいなガチャのような位置づけになり、「もし最前列だったら……」という思いに付け込んでそもそもの転売価格が上がりました。
さらに、入場してみたら希望の席とは程遠かった場合、前方の席を入手するために大金を積む、というやりとりが場内のそこかしこで行われているのです。
ジャニーズもそれに気がついて場内の見回りを強化したりはしていますが、一向に“取り引き”は減っていないのが現状です。
そしてAさんのケースの転売者は確実に“プロ”でしょうが、良心的なファンでもつい転売に心が傾いてしまうケースもあります。
匿名を条件にファンのBさん、Cさんが話を聞かせてくれました。
「好きで好きで、ずっと行きたかったグループのコンサートを友だちが当ててくれたんです。新幹線もホテルも取って楽しみにしていたのですが、直前になって友だちが仕事の都合で行けなくなってしまったんです。チケットの名義人は友だちなので、同行者の私だけでは会場に入れません。諦めきれず定価よりかなり高かったですが、“相場”でチケットを買いました。