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《直木賞候補作インタビュー》「歪でない家族なんているのだろうか」一穂ミチが突きつける6つの「家族」の物語

『スモールワールズ』

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『スモールワールズ』というタイトルに込められた意味

 初孫の誕生に沸く家族を襲った悲劇を童話調で描いた「ピクニック」は、実際に起きた事件に着想を得て書かれた作品。読者の先入観を大きく揺さぶる衝撃的なミステリーだ。

「ニュースや新聞で、事件の容疑者に関する報道を見るとき、その人に対して怒りの感情が湧くことはあっても、『本当はやっていないのではないか』と考える人はなかなかいないと思います。一方的な決めつけがもたらす恐ろしさを書きたいと思いました」

 それぞれの家族が形成する小さな世界を、外の人間は完全にうかがい知ることはできない――。『スモールワールズ』というタイトルには、そんな意味が込められているという。6つの家族を丁寧に掬い取った物語は、“家族というものの底知れなさ”を突きつけると同時に、読者の他者への想像力を刺激することだろう。

いちほみち 2008年『雪よ林檎の香のごとく』でデビュー。ボーイズラブ小説を中心に作品を発表。劇場版アニメ化もされ話題の『イエスかノーか半分か』など著作多数。

スモールワールズ

一穂 ミチ

講談社

2021年4月22日 発売

《直木賞候補作インタビュー》「歪でない家族なんているのだろうか」一穂ミチが突きつける6つの「家族」の物語

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