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《直木賞候補作インタビュー》「急に若い異性が家族として入ってくるってどういう感じなんだろう」砂原浩太朗の陰影描写が見せる“老武士と嫁”のあわい

『高瀬庄左衛門御留書』

note

登場人物は作品への出演者

「成長小説が好きなんです。庄左衛門は五十歳の男性だけど、彼も成長していく。最初は日々の勤めに疲れ、人生に対して心を閉ざしていたのが、人との出会いを経て、ふたたび外の世界へ思いを向けていきます。最後、青年たちのメンター(指導者、助言者)として心のなかで仰がれるようになるのは、自分が常に成長というテーマを意識しているので自然に出てきた流れですね」

 さらに若き日の親友・慎造との再会で、庄左衛門の心にも大きな波が――。

「小説を書くとき、登場人物は作品への出演者だという気もちでいます。出てもらう以上は、芝居のしどころを作ってあげたい。ただ、それは『こいつも意外といいやつだったな』という方向に進みがちでもあります。けれど、慎造という男は、けっしてそうじゃない。それでいて、存在感のあるキャラクターとして書けたことに、作家として手応えを感じています」

すなはらこうたろう 1969年兵庫県生まれ。2016年、第2回「決戦!小説大賞」を受賞し作家デビュー。著書に『いのちがけ加賀百万石の礎』『逆転の戦国史』がある。

高瀬庄左衛門御留書

砂原 浩太朗

講談社

2021年1月20日 発売

《直木賞候補作インタビュー》「急に若い異性が家族として入ってくるってどういう感じなんだろう」砂原浩太朗の陰影描写が見せる“老武士と嫁”のあわい

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