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登場人物は作品への出演者
「成長小説が好きなんです。庄左衛門は五十歳の男性だけど、彼も成長していく。最初は日々の勤めに疲れ、人生に対して心を閉ざしていたのが、人との出会いを経て、ふたたび外の世界へ思いを向けていきます。最後、青年たちのメンター(指導者、助言者)として心のなかで仰がれるようになるのは、自分が常に成長というテーマを意識しているので自然に出てきた流れですね」
さらに若き日の親友・慎造との再会で、庄左衛門の心にも大きな波が――。
「小説を書くとき、登場人物は作品への出演者だという気もちでいます。出てもらう以上は、芝居のしどころを作ってあげたい。ただ、それは『こいつも意外といいやつだったな』という方向に進みがちでもあります。けれど、慎造という男は、けっしてそうじゃない。それでいて、存在感のあるキャラクターとして書けたことに、作家として手応えを感じています」
すなはらこうたろう 1969年兵庫県生まれ。2016年、第2回「決戦!小説大賞」を受賞し作家デビュー。著書に『いのちがけ加賀百万石の礎』『逆転の戦国史』がある。