レースも2頭が互いに意識し合い、緊張感たっぷりの戦いとなった。
11番人気のニシノダイオーが一か八かの逃げを敢行するなか、スペシャルウィークは4、5番手の絶好のポジションを確保する。リラックスした走りで、武騎手も馬の行くがままに走らせている。そのうしろ、馬1頭分ほどの間隔をあけてグラスワンダーがいる。標的を決めたときのレース運びには定評のある的場均騎手らしく、スペシャルウィークをぴったりとマークして離さない。
ゆったりとしたペースを考えてか、グラスワンダーの気配を察したのか、スペシャルウィークは早めに動きだし、4コーナーの手前で先頭に立つ。武騎手の手綱はまだ動かない。グラスワンダーもまた一定の間隔を保ったまま2番手にあがっていく。
そのまま4コーナーをまわって、直線。スピードアップした2頭について行ける馬はいない。スーパーホースの一騎打ち。トウショウボーイとテンポイントの有馬記念を思いだす、痺れるようなシーンだった。
だが、2頭が並んだのはわずかな時間だった。直線のなかほどで何度か鞭を入れられたスペシャルウィークを、前肢をたたきつけるような独特の走りでグラスワンダーが追い抜いていく。こんなに力の差があったのかと思うような強さで、ゴールしたときには3馬身の差をつけていた。初対決はグラスワンダーの完勝となったが、スペシャルウィークと3着のステイゴールドには7馬身という大きな空間があった。それが2頭の抜きんでた強さを物語っていた――。
歴史に残る“4cm差決着”の名勝負
ちなみにその後、グラスワンダーとスペシャルウィークは年末の有馬記念でふたたび顔を合わせることになる。こんどはスペシャルウィークがグラスワンダーを徹底マークする、宝塚記念とは逆の展開となった。最後は歴史に残る“4cm差決着”の名勝負を演じた末、再びグラスワンダーがスペシャルウィークを退けている。
幾度もファンを熱くさせてくれた2頭の名勝負。今年の宝塚記念でも、そんな熱戦が見られるだろうか?