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《わたしの夢が走ります》宝塚記念前に読みたい! ウマ娘ファンが知っておくべき「スペシャルウィークvs.グラスワンダー」“群雄割拠の大熱戦”

2021/06/24
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「史上最強の2歳馬」グラスワンダー

 グラスワンダーは95年2月18日にアメリカ・ケンタッキー州の牧場にうまれた。96年9月のせり市で尾形充弘調教師によって落札され、日本で走ることになった。価格は25万ドル(当時のレートで約2500万円)。のちの活躍を思えば格安だった。

 2歳では4戦してすべて楽勝だった。GⅠの朝日杯3歳ステークス(当時)では2歳馬のレコードタイムを樹立、マルゼンスキー(通算8戦8勝で殿堂入りした名馬。朝日杯では2着に大差をつけ、レコード勝ち)と比較される、「史上最強の2歳馬」という評価を得ていた。

©文藝春秋

 当時、外国産馬にはクラシックレースの出走権がなく、3歳春のグラスワンダーはNHKマイルカップを目標にしていたが、3月に右後肢を骨折してしまう。10か月ぶりのレースとなった毎日王冠では1歳上の快速馬サイレンススズカに真っ向勝負を挑んだが、最後に力尽きて5着だった。このとき2着に追い込んできたのがNHKマイルカップに勝ったエルコンドルパサーで、ジャパンカップでもスペシャルウィークを破っている。

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 グラスワンダーはアルゼンチン共和国杯でも6着に敗れたが、体調が戻った有馬記念では1番人気のセイウンスカイを寄せつけず、メジロブライト、エアグルーヴら年長の強豪をねじ伏せている。ところが、4歳になると右前脚の骨膜炎を患い、さらに右目を負傷、全身麻酔をかけて40針も縫う手術を余儀なくされる。それでも復帰戦の京王杯スプリングカップには勝ったが、安田記念ではエアジハードに鼻差の2着と不覚をとってしまう。怪我が重なって満足な走りができず、どこかもやもやした状態でスペシャルウィークが待つ宝塚記念に向かった。

©文藝春秋

第40回宝塚記念「スペシャルウィークvs.グラスワンダー」

 迎えた99年7月11日、第40回宝塚記念。

 ほんとうならば同世代のライバルとして相まみえるはずだったエルコンドルパサーはフランスに渡り、1週間前にサンクルー大賞(GⅠ)に勝っていた。スペシャルウィークもグラスワンダーも世代最強を証明するためにも、ここは絶対に譲れないレースである。

 1番人気はファン投票でも1位のスペシャルウィークで単勝1・5倍。ファン投票2位のグラスワンダーが2・8倍。3番人気には皐月賞2着、ダービー4着の3歳馬オースミブライトが抜擢されたが、オッズは15・9倍。マチカネフクキタルもキングヘイローもステイゴールドも、この日はその他大勢の1頭でしかない。