文春オンライン
“漫画でもでき過ぎ”ソダシの奇跡 なぜこれまで「強い白毛馬」がいなかったのか?

“漫画でもでき過ぎ”ソダシの奇跡 なぜこれまで「強い白毛馬」がいなかったのか?

2021/04/18

 ソダシが桜花賞を制した。

 白毛馬によるクラシック優勝は、世界初のこと。しかも自身初めてとなるクラシック出走で成し遂げた快挙だった。

桜花賞を制した白毛馬ソダシ

 人目を惹く白毛馬による偉業は、競馬という枠を超えて大きく注目され、その日19時からの『NHKニュース7』でも報じられた。桜花賞とはいえ、競馬の結果が同番組で取り上げられるのは極めてまれなことだ。

ADVERTISEMENT

いままで“強い白毛”がいなかった理由

 ではなぜ、強い白毛馬がこれまで現れなかったのか?

「1990年代までに生まれた日本の競走馬の中でも白毛は圧倒的に少なく、8頭だけです(突然変異4、遺伝4)。そのうち中央競馬で走った4頭は、すべて未勝利に終わりました。白毛は弱い、白毛は走らない。そういったイメージがついたのは、この頃の印象でしょう。種牡馬や繁殖牝馬になれた白毛馬にしても、白毛の遺伝の有無など実験的な目的が主で、必ずしも強い馬を作る意味ではありませんでした。結局、絶対数が少ないので、強い白毛馬が出る確率も非常に低かったのです」(『日刊スポーツ』レース部長の岡山俊明氏)

 2000年以降となると昨年までに32頭の白毛が生まれているが、それでも他の毛色に比べればまだまだ希少だ。

 遺伝にせよ突然変異にせよ、白毛として生まれ競走馬として登録されたサラブレッドが他の毛色に比べて虚弱、あるいは身体能力で劣るといった生物学的要因を有していることはないという。

 ただレースを戦う上で、白い馬体は明らかに不利に働く。

「何しろ目立つので、人気を背負えばマークされやすい。後ろを走る馬からすればすぐにわかるので、仕掛けの目標になってしまうのです」(岡山氏)

 しかし緑のターフの上、あるいはダークな色合いの馬群の中でひときわ美しく映える白毛に、ロマンを託す者もいる。ディープインパクトなど数々の活躍馬を所有してきた日本競馬界の名物オーナー、金子真人氏である。