ドラマに出てくるような“幸せな家族”の違和感
「初体験は?」と聞くと、「中2。ちゃんと付き合った同い年の彼氏としました。それからは、セフレはいたけど彼氏はいません」と言う。
少し早熟な気もするが、異常というわけではない。しかしセフレがいたということは、彼氏じゃなくてもセックスはできるということか。
「ウフフ、どうなんですかね。あんま考えてなかったです。毎日、がむしゃらに生きてたから」
そう曖昧な答えに終始したのはなぜだろう。彼氏以外とセックスすることは厭わないのだろうが、それがカネで抱かれることを正当化する理由にはなりはしない。やはり親戚の家は居心地が悪く、居場所を求めて援助交際をはじめたのだろうか。
「うーん、居心地は良かったんですけど。私、お父さんが小3くらいから月に2、3回しか帰ってこなくて、ずっとひとりだったんですよ。それが突然、『はい、温かい家族です』みたいになって。みんな優しくしてくれるけど、こんな私に良くしてくれる“申し訳なさ”の方が大きくて。朝、昼、晩と、全て自炊して学校に行く以外はひたすら家事だけをしていた生活から、いきなりドラマに出てくるような“幸せな家族”です。洋服も好きなだけ買えます、黙ってても3食分のご飯が出ます。それで、アレ? みたいな。そんな生活に凄く違和感がありました」
他人ではない。しかし本当の親でもない人たちが親以上に愛情を注いでくれることに違和感があった。
「それで反抗してカラダを売ったんですかね、自分でもよく分からない。でも確実に言えるのは、さっきも言ったけど『早くこの家から出なきゃ』と、寝ても覚めても思っていたことです」
赤の他人との暮らしの方が気がラク
アコはいま、親戚宅を離れ都内の保護施設に身を寄せている。
「保護者(親戚)にエンコーがバレたんですよ。それで、また違う親戚の家に引き取られることになって。そこで、差別みたいなことがあって。本当の息子や娘じゃないからそんなに可愛がられないじゃないですか。そんな空気が態度や言動から感じられて、それが嫌で家に帰りたくなくて、『家出しちゃえ!』って」
赤の他人との暮らしの方が気がラクだ。それで心を突き動かされるままに家を出た。
援助交際が発覚した理由は、アコの外泊ぐせにあった。家に寄り付かなくなったアコを不審に思った親戚は、止むに止まれずアコの部屋を漁る。
〈8月13日、3万円〉
机の引き出しから発見した手帳には、日々の援助交際で得たカネが克明に記されていた。
「これは普通のバイトでは稼げない金額だよね」
そう親戚に問い詰められたアコは、仕方なく白状した。