18歳未満が働く“アンダー店”には女子高生が集まり、売春していた――。一時は警察の摘発が強化されていたJKビジネス。しかし、コロナ禍の長期化で風俗店も苦境となり、一部の店舗ではいままで御法度だった売春を含む「裏オプ」を黙認している店も出てきているという。
JKビジネス全盛期に12人の少女たちの声を拾い集めたのが、ベストセラー『売春島』で知られるノンフィクションライター、高木瑞穂氏の著書『裏オプ JKビジネスを天国と呼ぶ“女子高生”12人の生告白』(大洋図書)だ。少女たちは、どういう経緯や心境から簡単に体を売ってしまうのか。国連で「人身売買の温床」と指摘された社会の暗部を描いた作品から、一部を抜粋して転載する。(全3回の1回目/#2、#3を読む)
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「売春して自信が持てた」(アコ、17歳)
「お金はもちろん、予約でいっぱいになると、本当に嬉しい。リフレ嬢だったらわかると思うんですけど、『あっ、私、求められてる』って実感できるんです」
アコと会うのは、実は2度目だ。1度目は、某国の国営放送の取材クルーに、知人のテレビ・ディレクターを通じてキャスティングを依頼されたとき。条件は、「現役女子高生でJKビジネスで働いている」だった。そこで知人のブロガーの男を頼ったところ、なんとか取材を受けてくれたのがアコだった。
東京・新宿歌舞伎町。
仕事場からほど近い路上で落ち合ったアコは、小柄で、ほどよく肉がついたカラダをしていた。加えて肩まで伸びた艶のあるストレートの黒髪に、薄い縦縞が入った水色のワンピース姿だった。
取材クルーを待つ間、アコとブロガーの男が交わした会話を、いまも鮮明に覚えている。
「昨日、初めて出勤枠が全部埋まったんですよ。だから、いま、超ハッピー。あー、今日も満枠になるといいな」
「良かったね。アコちゃん頑張ってるからね。いま、いくらでしてるの?」
「3(万円)くらいです」
小耳に挟んだその会話について、彼女に「何がそんなに嬉しいの」と聞いたところ、返ってきたのが冒頭の言葉だった。正直、驚いた。
これまで仕事のスケジュールが真っ白だったアイドルやタレントが、活動が実りファンが増えて営業やテレビ出演などで予定がいっぱいになったのなら、話は分かる。しかし、高校2年生の少女が、まるでプロの風俗嬢のごとくセックスの予約でスケジュールが埋まることに充実感を覚えるとは、やはり普通であるはずがない。2017年3月のことである。
2度目の出会いも、1度目と同じく新宿歌舞伎町。彼女のウリ場からほど近い路上だった。