反発するかのように「エンコーの回数が増えました」
「部屋まで漁るのはアコちゃんのことを心配してくれていたとも言えるよね」と聞くと、痛いところを突かれた、といった表情で同調した。
「それは……思いました。でもエンコーをヤメるつもりはなかった。むしろ、“本当の家族との幸せじゃなくていきなり押し付けられた幸せ像”に反発するかのようにエンコーの回数が増えました。それでセックスを、すればするほど『こんな私が愛されちゃいけない』という思いが募った。だから『早く家を出なきゃ』と、前にも増して思うようになった。もちろん、それが自分のダメな所ではあるとは思うんですけど……バカですよね? 自分でもそう思います。でも、仕事(売春)をしている、いまが楽しいから」
その場に一瞬、沈黙と共に緊張感が走った。口は真一文字に締めるが、目は眼光鋭くこちらを睨みつける。それを僕は、アコが売春する理由を上手く咀嚼できず、苦しみ、もがき、すぐにでも嘔吐してリセットしてしまいたい訴えのように感じた。
「男に貢ぐ方が目標があっていい。そういう“支え”がない」
援助交際やJKビジネスでカラダを売る少女たちの大多数は多かれ少なかれアイドルやホストに貢いでいる。しかし、アコは違った。
「稼いだお金は洋服とか食事代に使っています。欲しかったヴィトンのお財布(15万円)も買いました。簡単ではないけどパッと稼げちゃうから、パッと使ってました」
そう話すと、アコは一呼吸置いて、「だから」と続けた。
「誰かに貢いでるとかは一切ないですね。アイドルとか男に貢いで、向こうは『何を与えてくれるの?』って思っちゃう。でも、男に貢ぐ方が目標があっていいじゃないですか。私にはそういう“支え”がないから、逆に羨ましい」
少し苦笑いした。負け惜しみのようにも聞こえるが、これは目標のないまま売春をする状況における迷いである。アコの心が揺れる決定的な要因は、そうした支えがないからだ。
もっとも、ここにアコが売春をする理由が眠っているのも確かだろう。大人に求められることで満たされる、目標がない自分の行為を肯定してくれるのである。
狂ったように(裏オプ)やってました
こうして目標のないまま売春を続けて半年後、JKビジネスを知り都内の散歩店に流れ着いた。
「JKビジネスも自分でツイッターで知り、自分からDM(ダイレクトメール)で応募しました。ツイッターを始める前は、その存在すら知らなかった。個人ではなく、店を通そうと思ったのは、単純に面白そうだと思ったから。ほんと、狂ったように(裏オプ)やってました。でも個人では、1日平均ふたりくらいが限界でしたね。個人だと会うのも大変だから。場所は新宿や渋谷のラブホ。あっ、相手の家に行ったこともありました。いま思えば『危ない橋を渡ってたな』と思います。でも大丈夫でした。みんな良い人でしたね、ちゃんとお金もくれたし」
(#2に続く)