「今すぐ沖縄に行きたいです」
そんなLINEが赤木雅子さん(50)から届いた。財務省公文書改ざん事件で夫を亡くし、国などに裁判を起こした原告。その人がなぜ、事件と関係のない沖縄をめざすのか?
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沖縄タイムスが「赤木ファイル」の開示を求める社説を掲載
雅子さんの夫、赤木俊夫さんは、上司にさせられた改ざんの詳細を職場で記録に残していた。「赤木ファイル」と呼ばれるその記録の開示を裁判で求めると、国は人名などを黒塗りにしてから出すと通告してきた。それでは誰がどう改ざんを指示したのかわからない。
これに対し「国は疑念に応えるため、すべてを開示するべきだ」と求める社説を、沖縄県の地元紙、沖縄タイムスが掲載した。
「遠い沖縄でも関心を持ってくれた」
これをきっかけに雅子さんは5月、生まれて初めて沖縄を訪問。新聞社を訪れ感謝を伝えた。その際「せっかく来たのなら」と、沖縄タイムスの阿部岳記者の紹介でお会いしたのが、戦争の遺骨収集をボランティアで続けている具志堅隆松さん(67)だった。
「不条理のそばを黙って通り過ぎるわけにはいかない」
沖縄戦で犠牲になった住民。日本軍や米軍の軍人。激戦地だった本島南部のいたるところに遺骨は埋まっている。いくら収集しても終わりはない。ところが国はこの地域の土砂を、辺野古の米軍基地建設の埋め立てに使おうとしている。戦死者の遺骨を、敵だった米軍の基地のために埋め立てるとは、本来なら保守派や右翼・愛国者が真っ先に怒りの声をあげるべきところだろう。しかし実際に声をあげたのは具志堅さんだった。「遺骨の混じった土砂を埋め立てに使うのは人道上許されない」と訴えたが、国からはまったく誠意ある返事が返ってこない。
雅子さんも、夫の死を招いた改ざんの真相を知りたいと訴えているが、国から誠意ある答えはない。立場が同じだと感じる。だからこそ具志堅さんに尋ねた。それでもくじけず、国に訴え続けるのはなぜなのか?
「……不条理のそばを黙って通り過ぎるわけにはいかないからです」