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「一体何度殺したら気が済むんだろう」

 ハンスト会場には、遺骨入りの土砂による埋め立てについて「戦没者を二度殺すようなもの」と書かれていた。これに雅子さんは目をとめた。

「夫の作った赤木ファイルを黒塗りして出すのも、夫を二度殺すようなものです。沖縄の遺骨もそうだと思いますが、一体何度殺したら気が済むんだろうと思います」

ハンスト会場を訪れた赤木さん

 それに具志堅さんも「国は間違っていたということを示すために、黒塗りなしで書類を出すべきです」と共感を示した。

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 ハンストはこの日で3日目。雅子さんは体調を気遣った。

「ニュースで見て駆けつけたんですけど、お元気そうでよかったです」

「から元気ですよ」

「そうですよね。お腹も空っぽですよね」

「国会議員が来てくれるより力が出ます」

 具志堅さんは、ハンストが終わったら沖縄料理の「フーチャンプルー」を食べますと、にっこり笑った。そして感謝の思いを伝えた。

「激励に来てくれたとわかって『人間生きてるといいことあるな』と感じましたよ。国会議員が来てくれるより力が出ます」

 その言葉に逆に力をもらった雅子さん。

「やっぱ来てよかったわ」

 滞在わずか8時間の弾丸ツアーで駆けつけた甲斐があった。

沖縄を離れる機中にて

◇ ◇ ◇

国を相手にした二人の闘いが迎える大きな節目

 あす6月23日の裁判本番を前にしたきょう22日、雅子さんの代理人弁護士に国からの書面が届いた。期待と不安に胸を高鳴らせながら封筒を開くと、518ページに及ぶ大部な書類の束が出てきた。これが赤木ファイルだ。

 雅子さんの目は真っ先に書類に書き込まれている手書きの文字に吸い込まれた。趣味の書道のくせがあらわれる崩し字。私にしか読めない。

「これ、夫の字です。すぐにわかります」

 改ざんを指示するメールの差出人はほとんど黒塗りにされている。それでも多くの新事実が含まれている。最大の新事実は、首相の妻だった安倍昭恵さんの名前を含む部分を示し「削除した方が良い」とはっきり指示している本省からのメール。受取人の一人だった俊夫さんが、この改ざんを実施させられたとみられる。ほかにも麻生財務大臣、安倍晋三首相(当時)の名前が記された部分も「修正の必要がある」とされている。

 夫を死に追いやった改ざんの真相を知りたい赤木雅子さん。戦没者への冒とくとなる遺骨の埋め立てを食い止めたい具志堅隆松さん。国を相手にした二人の闘いは、ともにあす23日、大きな節目を迎える。

写真=相澤冬樹