6月16日、参議院にて審議されていた「国家安全保障上重要な土地等に係る取引等の規制等に関する法律案」、通称土地規制法案が自民、公明、日本維新の会、国民民主などの賛成多数で可決成立した。この法案に対しては野党である立憲民主や共産各党が反対を表明している。
外国資本などによる土地の買収に規制
この法案の骨子は、国内の防衛施設や原子力発電所などの重要な施設周辺、あるいは国境近くに存在する離島などで、主に外国資本などによる土地の買収を、安全保障上のリスクととらえ、こうした取引に関して一定の規制をかけることを目的にするものだ。
具体的には、対象地域を防衛施設、原子力施設等の国家安全保障の観点から重要な施設および設備や国境離島が対象となる第1種重要国土区域と第2種重要国土区域に分け、この区域内の所有者の氏名、地番などの住所、地目、利用実態などに関する調査や境界、面積などの測量を行えるようにするものである。
実際に対象となる地域に関しては、国境離島で484カ所、防衛関係施設で500カ所以上とされるが具体的なリストは公表されていない。
所有者の権利が強く守られている日本の不動産
この法案の背景は、外国人によって相次ぐ日本の土地の買収だ。長崎県対馬において自衛隊基地周辺の土地が買収された。また、民間航空および自衛隊が利用する北海道の新千歳空港周辺でも外国人による土地の買収が行われ、水源地や広大な面積の山林なども対象になっている。
実は日本の不動産所有権は世界でも珍しいほど私権が強いと言われる。欧米など先進国では防衛上の観点から、国の重要な施設である防衛施設や空港、港湾施設などの周辺での不動産売買は禁止や、許可制、届け出などが義務付けられている。
またイギリスでは土地は所有権ではなく、国から借りる、つまり借地契約の形態をとる。東南アジアで不動産売買を行う場合でも、外国人や外国資本は所有権の50%未満にし、過半数を自国民または自国の法人が所有しなければ、保有を認められないところが主流だ。
それに引き換え、日本は国中どこの土地であっても売買は基本的に自由だ。そして不動産の所有権は強固であり、公といえど、勝手に私有地に出入りしたり、所有者を調査して指導や命令などはできない仕組みになっている。